慢性疼痛を起こすメカニズムについて、画期的な研究発表が行われました

身体へのヒント

理化学研究所が、末梢神経損傷によって未熟化した神経膠細胞(グリア細胞)が 難治性慢性疼痛を起こす脳内回路を作るという研究発表を行いました。難治性慢性疼痛の予防・対策に期待されます。オリジナル記事はこちら

事故などで外傷を負った後、怪我をした部位が治癒しても長期間にわたり痛みが持続するような場合があります。このような症状を難治性慢性疼痛と言いますが、なぜ傷ついた末梢組織が治癒した後も痛覚過敏が続くのか、この症状を引き起こす脳内メカニズムについては、これまで殆ど明らかにされていませんでした。

今回の発見
1:痛みや触覚などの感覚情報を処理する大脳皮質の脳部位において、末梢神経損傷後に神経膠細胞(グリア細胞)の一種であるアストロサイトの未熟化が起こり、その活動が亢進することが判りました。
2:活動が亢進したアストロサイトから神経細胞間のつながりを再編成させる因子であるトロンボスポンジンが小胞体のIP3受容体の活動により放出され、大脳皮質の痛みや触覚などの感覚情報を処理する脳部位の神経回路に再編成が起こります。
3:この再編成された神経回路は、末梢の触覚刺激に対して過剰な反応を引き起こします。
4:アストロサイトの活動の亢進はその後収まりますが、一旦再編成された異常な神経回路は長期間維持されるため、末梢を触っただけで痛みを感じる症状(アロディニア)が長期間持続する、という機序が明らかになりました。
5:本研究成果は、アストロサイトの活動を制御することをターゲットにした対策法の開発に結びつくことが期待されます。