ばね指、指の付け根の痺れや、痛み

身体へのヒント

年配の美容師さんを拝見した。長い年月、人生と戦い続けていらっしゃるので、身体のあちこちに疲労の蓄積がみられる。なかでも、仕事柄、たいへん不自由で、たいへん不愉快を感じていらっしゃるのが、薬指と小指のばね指である。指を曲げたり、伸ばしたりするたびに、指が、かくかくと引っ掛かり、作業の邪魔をする。

さらには、手の掌の中指の付け根 (MP関節) 周辺に硬結がみられ、これが痺れる。痺れが弱い時は痛みを発する。左手側なのだけど、ドライヤーを操作するのに、大変つらい、とおっしゃる。

ばね指は、深刻なものではなければ、治療は簡単である。屈筋腱が腱鞘を通る部分で、違和点を触診して、1番鍼を軽く刺す。たぶん、鍼灸学校の1年生でも可能な技術である。多くの場合、その場で改善する。

手掌の関節周りの痛みの治療法には、いろいろなものがあるが、この患者さんの場合、こういう各部の治療の前に、全身の基礎治療を行っているので、普通に灸をすえることにする。透熱灸という、艾 (もぐさ) を小さく捻ったものを、問題点の上に正確に置き、火を点ける。一瞬ぴりっと熱感が走る。

今回は、1壮 (灸はこう数える) だけで、ほぼ痺れが消えたので、よかった。これも技術的には、鍼灸学校の1年生の技術である。

底冷えする環境での立ち仕事、気を使いながら、手先を巧妙に動かす。昨夜は仕事のあと片付けをして、寝たのは2時。今朝は5時に起きて、家事をしたと。せめてもと、せんねん灸を渡し、痛みが出た個所に使うようにお話をした。