人間の身体は不揃いで、あたりまえ

身体へのヒント

腰痛や頚肩部痛を感じていらっしゃる方の中には、その原因を「体のゆがみ」と捉えていらっしゃるケースが見られます。

私ども東洋医学では、身体は歪んでいてあたりまえ、不揃いであたりまえ、問題はそれを調整する力が働かないことと考えます。

したがって施術目的は、歪みを取ることではなく、その「調整能力を復活させること」です。

背骨・腰骨の歪み・奇形と、痛みとの間には因果関係がありません

腰痛を例に考えてみましょう。

例えば、腰が激しく曲がっている年配の方をご覧ください。そのお体で健康に日々を送っている方はいくらでもいらっしゃいます。あの方の背骨はどのようになっているのでしょう?

整形外科などで、ヘルニア・すべり症・湾曲・側弯などと診断されますが、その骨の形は、あの年配の方の腰ほど歪んでいるのでしょうか。その程度の歪みが原因で、激しい痛みが生じるのであれば、なぜあの年配の方は、通常の生活ができるのでしょうか。

お年を取っていらっしゃっても、背骨が曲がっていらっしゃっても、通常の生活がおできになるのは、平たく言えばその方が「お元気」だからです。ここでの言い方では「身体の調整能力」が高いからです。

もっと若くても、それができないのは、若いのに「体力がない」「身体の調整能力が低下している」からです。

よく「痛い腰や肩に鍼は刺さないの?」との質問を受けますが、痛む腰や肩に鍼を刺しても、一時的に痛みが減退するだけで、根本的な寛解には至りません。

体の痛む場所に施術しても、身体の調整力は向上しないからです。

パラリンピックに絡んだ記事の中に、この件と絡む印象的なものを見つけました。日刊スポーツの『首藤正徳のスポーツ百景』2016年9月8日14時9分 「転倒した聖火走者への拍手の先に見えた希望」です。リンクはこちら。以下記事の該当部分を引用します。

競泳日本代表の山田拓朗の話を思い出した。彼は先天的に左ひじから先がない。それでよく真っすぐ泳げますねの声に、彼はこう答えた。「もともと左手がある感覚が分からない。だから、これがふつう。僕は不便を感じたこともないし、全部そろっている感じです」。3歳で水泳を始めて今回が4回目のパラリンピック。左手がないから泳ぎづらいも、健常者の勝手な先入観だった。

人間の身体の調整能力は本当に素晴らしく思います。腕の左右の不揃いの帳尻を合わせて通常の、いえ通常以上の運動能力を発揮するのです。

このようなお話を伺うと、例えば腰痛の原因について、「背骨の歪みが原因である」という西洋医学的考え方よりも、「背骨の歪みによる痛みを解消するだけの体力が失われている」という東洋医学的な診断法に一理があるように思えてなりません。