痛みを止めることについて

痛み

「痛み」との戦いは人類が始まって以来のものだと思いますが、21世紀がかなり経った現在でも「鎮痛」に対する決定的な治療法は、確立されていません。

西洋医学からはオピオイド、NSAIDsを初めとする多種の薬剤が開発され、手技施術の分野では、マッサージ・整体などの技術が普及し、さらにはアロマテラピー、トリガーポイント理論、ファシア(筋膜)リリースなど、鎮痛を謳う手法は、次々に開発され、多くは忘れられていきます。

なぜなのか?

それは「痛み」という感覚を生む原因が、単純ではないから、なのです。

 

肩が凝る人、凝らない人

例えば、「肩が凝っていて、とっても不快だ」という患者さんがいらっしゃるとします。こういう患者さんの肩は、必ず凝っているのか?

そんなことは、ないのです。ガチガチに筋肉が硬化した状態でも、それを不快に思わない、凝っていると感じない方が、多くいらっしゃる。

「肩こり」が「からだの不快」さを呼ぶのであるならば、ガチガチに肩の筋肉が硬化した方は、みなさん、不快さを感じていなければ、理屈が通りません。よく発痛の原因にあげられる「ヘルニア」「ストレートネック」も同じです。

ところが、そうはならない。「痛む人」と「痛まない人」がいるのです。

 

痛む人と、痛まない人の違いは、身体の個性

つまり、個人個人の身体の個性によって「痛みの発生メカニズム」「痛みのレベル」が異なるのです。逆に言えば、鎮痛は、その方の個性に、合わせたものでなければならない、ということになります。

筋肉だけ、神経だけ、運動メカニズムだけに、アプローチする、では困るのです。

痛みは、人格を破壊するほどの深刻な病症ですが、その全容が解明されているわけではありません。
私どもは「痛いところに鍼を刺したら、治った」というような次元以上の、各人の身体個性に合わせた鎮痛を目指しています。

 

鍼灸(はり・きゅう)による、鎮痛について

東洋医学は「個人に備わっている自己回復力を使って、体調を正常に戻す」というのが本来の目的です。※東洋医学による鎮痛ついては、こちらをご参考ください。

ところが「東洋医学的な効果」が発揮されるまでに、時間がかかる場合、それまでのあいだ、痛みに耐えていただく、というわけにはいきません。

痛みには、迅速な鎮痛が必要です。

以下にご紹介するのは、本院で扱う「非東洋医学的な」つまりは「西洋医学的な」治療法の例です。

鍼灸(はり・きゅう)とは、単に「はりや灸を使う、施術法のこと」と考えれば、その際の治療理論が「東洋医学的」であっても「西洋医学的」であっても、かまわないわけです。

痛みは長く置いておくと、慢性化して治療が厄介になります。初期の段階に、手段を選ばず鎮痛する、というのが重要だと思います。

筋肉に鍼を刺して、鎮痛する
筋肉が硬化すると、そのエリアに広がる極小毛細血管が圧迫を受けて、発痛物質である老廃棄物の排出が不可能になります。これが、痛みを発生する要因の一つです。筋肉に鍼を刺すと、その部分に極小の筋破壊が起き、抗...
カッピングで、なぜ痛みが取れるのか
カッピング(吸玉・吸角)をかけると、皮膚の下に紫斑ができます。これは、陰圧にした吸角を皮膚に密着することで、皮下の血管壁が吸引されて、毛細孔隙の血清濾過量が増加した印です。これによって、筋肉自体の硬結...
ガラス製のカッピングで、鎮痛する
カッピング(吸玉・吸角)には、ポリカーボネートで作られたカップを、ポンプを使って吸引するタイプのものと、この写真のような、ガラスのカップを、カップ内の酸素を火を使って燃焼し、陰圧にして使うものの、2種...
低周波通電(パルス)で、鎮痛する
刺した鍼に、写真のような低周波を発生させる機械をつなぎ、筋肉に単収縮を起こすことで、鎮痛を行います。一般に、低周波鍼通電療法(鍼パルス)と呼ばれ、以下の種類があります。筋パルス筋肉の緊張を緩和すること...
カッピングと運動で、鎮痛する
カッピングした状態で、身体を動かしていただくことで、関節可動域を広げ、痛みを取る、という療法です。身体機能の解釈と、鎮痛治療の技法には、いろいろなものが開発されています。筋肉と、それを包む筋膜の癒着を...

 

東洋医学的な鎮痛法についても、いくつかご紹介します
経絡を使って、鎮痛する
東洋医学的では、身体に、経穴(一般に「つぼ」ともいわれます)という、体の状態を変える力がある、特定の場所がある、と考えます。写真は「合谷(ごうこく)」という経穴で、頭部に発生した痛みを緩和する力があり...
刺絡して、鎮痛する
瘀血(おけつ)は、東洋医学的な意味での「血(けつ)」が、体内で滞り、沈殿した状態のことを言い、西洋医学では「抹消静脈系の微小循環障害」と理解されています。瘀血が存在すると、激しい痛みを発生させる場合が...
火鍼で、鎮痛する
繊維筋痛症などの激痛は、脳の「下降性疼痛制御メカニズム」の不全が原因の一つと考えられています。この場合、末梢神経に、ある程度の強さの疼痛を与えると、鎮痛効果があることが知られています。激痛の鎮痛には、...

 

肩こり・腰痛・関節痛については、以下でもご説明しています
肩こり・腰痛・関節痛
肩こり、腰痛は、背骨の歪みやバランスの崩れと診断されますが、それが原因ではありません。頸・腰部痛の対策に関して、日本で従来から行われている病院・整体療法は、いろいろな問題を抱えています。整形外科系疾患...