施術のあと、足を組まなくなりました Cさん35歳女性

症例報告

私はアニメーションの制作会社のスタッフです。朝から夜遅くまで、基本的には机に座り、コンピュータを使って映像を作成しています。
ときどきミーティングがありますが、それも1週間に数度。締め切り間近になると、最終の電車まで、会社で作業が続きます。

それに、私の家は、栃木と群馬の県境に近く、通勤のために電車に乗っている時間も、かなり長く、疲れているので、朝も夜も、椅子に座って寝てしまいます。

来院した理由は、腰の痛みです。

仕事中にも、うずくような痛みがずっと続いているのです。先日同じ班の先輩がぎっくり腰になり、激しく苦しんでいるのを目の当たりにして、怖くなり、ああなりたくないと思い来院しました。

腰のどこが痛い、と問われてもよくわからないのです。押されたところは全部痛いのです。

思っていたよりもたくさん刺されました。正直いって痛いところもありましたが、がまんしました。しばらく、筋肉痛のような、どーんとした感じ。

でも、次の日、仕事後に気づいたことがありました。
それは、足を組まなくなったこと。

私は、なんだか下半身が辛くて、足を組んだり組み替えたり、いろいろ体位を変えたりしていたのですが、それで不快感が解消されるわけではありませんでした。
ところが今日は、普通に椅子に座って作業をやっていたのです。辛さもなく、なんだかびっくりしました。

ビジネスマンだけでなく、いろいろな職種の方が、終日、コンピュータに向かって作業を行っていらっしゃいます。とうぜん、座っている時間が長くなります。

Cさんのように、通勤時間には体力と睡眠不足を解消したく、椅子に座って寝続ける、という方も多いでしょう。こうなると起きているあいだ中、座っていることになります。

長時間座り続ける、身体をある形に固定して、動かさない。

こういったことが体調を悪化させることは容易に想像できますが、それは単に「腰の痛み」や「肩の凝り」だけの問題ではありません。実は、東洋医学でいう「脾」に悪影響を与えます。「脾」とは、消化機能全般と考えていただいて結構です。

この問題はとても重要なのですが、ここではそれ以前に、同一姿勢を維持することによる筋肉の不調が問題です。

Cさんがおっしゃるように、座り続けると、下半身のだるさが発生し、それを緩和させるために、足の位置や組み方を変えたりします。これは腰というよりも、臀部の筋肉の血行不良によって発生していると考えられます。

よく患者さんは「腰が痛い」とおっしゃるのですが、必ずしも腰ではなく、この場合のように、臀部の筋肉痛である可能性も高いのです。

そこで、尻に鍼を刺します。

腸骨稜の脇や、大転子の付け根部分。筋肉の名前でいえば、大殿筋・中殿筋・閉鎖筋といったものが対象です。これらの筋肉の、骨への付着部分は、体表から深い位置にあるので、体格がいい方だと、10cm以上の鍼を使う必要があります。マッサージなどの手技では影響を与えにくい場所です。

※ 写真は、うちのネコ「こむぎ」です。これで、隠れているつもりです。