『ヨイ豊』梶よう子を読む

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私は人生で最初になりたかった職業が浮世絵研究家なので、幕末の錦絵については少し興味がある。ただ風景画と違って、風俗画や美人画、そして何より役者絵については、当時の江戸の美意識について高度な知識がないと、その絵の意味を理解することが難しい。

これは、豊国の名を世に高めた師匠と、圧倒的な天才性を持った後輩に囲まれ、江戸が終末を迎え明治へと移る中で、自分の適性を疑いながらも「4代目豊国」を継ぎ、高い矜持を持って、前時代の遺物のなる運命に抗った男のお話である。

技術の刷新とともにあっさり失われていく「文化」の様と、そこに携わる職業人の人生について、いろいろ思いを巡らせる。

GPTとともに職を失う人とかについて。職を守ることによって失われる、何事かについて。