不安神経症で治療中の患者さん、「藁をつかむような思いで」来院されました

身体へのヒント

心療内科で不安神経症と診断されて、長らく治療を続けていらっしゃる患者さんがいらっしゃいます。

何かのきっかけで不安が沸き立つと、思考がネガティブな方向へ流れ出す。それを止められない。

食欲がない→胃が痛むような気がする→父は消化器系の癌を患った→私も癌なのではないか。

夫が咳き込むことが多い→彼はいくら言っても体に対する意識が乏しい→すでに病に体が侵されているのではないか→彼が亡くなると私はどうして生きていけるのだろう。

などと。

普段当たり前にできている買い物や、移動にも支障が生じてしまう。突然パニック状態に陥って、人前で泣いてしまう。

初診時には、表情も挙動も、身体の反応も、明らかに安定した状態ではありませんでした。そこで、週1回か2回、お話を伺いながら、東洋医学的なもの、西洋医学的なものの両方を使って、筋肉や神経にかかる余分な負荷を緩める施術を施しました。

患者さんの状態は、院の入り口でお迎えしたときに、おおよそわかります。この患者さんも、10回目くらいになると、立ち居振る舞いが、安定していらっしゃいました。でも、たいていの場合、患者さんはそれにご自覚はありません。「改善した自覚」というのはなかなか難しいのです。

今年のゴールデンウイークは、私に事情があり、5日ほどお休みをいただきました。患者さんは、不安を訴えられましたが、乗り切れるだろうという確信があったので、何かあったらLINEで連絡をください、緊急の時は拝見します、とお伝えしました。

ご連絡はありませんでした。

後で伺うと、何度も連絡をしようとためらい、リーゼを飲もうともしたけど、なんとか頑張れました、とのことでした。

このようなメンタルダメージに対して、鍼灸は基礎トレーニングのようなものです。施術回数を重ねていただくことで、ダメージに対する回復力や抵抗力が高まるのですが、それは実戦でしか確認できません。

実際に、経験していただいて、あー大丈夫だったな、と思っていただくことが施術の成果です。このようなタイプの患者さんが治られたかどうか、私どもにはわからないのですが、ご連絡が途切れたことが、改善された印なのだろうと思っています。