タイトルをつけるのは、難しい

Staff Blog

私が今の業界と、ささやかな接点を持ったのは、祥伝社という出版社で編集の仕事をしていた時だった。

もはや正確なタイトルも、著者の名前も失念したのだが、ノン・ブックという新書のシリーズの1冊として、カイロプラクティックの治療家の本を出版した時だった。内容は、いろいろな病症を取ることができるとの、カイロプラクティック紹介本だった。持ち込み企画だったのかもしれない。私は直接の担当ではなかったので、竹村健一氏の帯用の推薦文の受け取りといった雑用をしただけだった。

当時、出版する本のタイトルは、編集部で決めることになっていて、毎週月曜日朝に開かれる編集会議の、重要な議題だった。

『奇跡の治療・カイロプラクティック入門』みたいな、無難な案でまとまりかかったのだが、編集部部長の伊賀弘三良さんが「なんだかピンとこない」とOKを出さない。「こういうときはな、間口は狭く、奥行きは広く」がいいんだがな、という。それで『奇跡のように、肩こりが消えた』というのが捻りだされた。

それでも「なんかパンチがない、印象に残らない」という。じゃあと、担当者がメインタイトルが『肩こりは、揉めば揉むほど悪くなる』、サブタイトルに『奇跡の治療・カイロプラクティック入門』ではどうか、と提案、OKとなった。著者の「肩こりは素人が揉んでも、よくならない」という主張を、少し変形させたのだった。

これでも、当時は、結構思い切ったタイトルだった。確か、初版3万部。再版がかかったと思う。今では、普通のタイトルだけど。