「繊維筋痛症」は、原因不明の全身疼痛を主症状とし、神経精神症状(不眠・うつなど)・自律神経障害(過敏性腸症候群・逆流性食道炎など)を呈する病気で、次のような特徴があります。
・痛みは、筋肉・腱付着部・関節を中心に、全身性で激しい
・ドライアイ・逆流性食道炎などの粘膜性障害が高度に合併する
鍼灸院に来院される患者さんのうち、10%前後が繊維筋痛症の可能性があり、慢性病を訴えて来院する患者さんに限ると、割合は20%近くに及ぶという説もあります (『鍼灸臨床最新科学』「6.運動器系/繊維筋痛症」伊藤和憲)
病院で、最終確定診断を得るまでに付けられた病名には、次のものがあります。
リウマチ性疾患/膠原病疾患/自律神経失調症/うつなどの精神疾患/慢性疲労症候群/頚椎症/頚腕症候群/腰痛症などの整形疾患
繊維筋痛症の確定診断を得るまでに要した時間は、発症から平均4.3±7.4年。平均3.9±2.8科を受診していらっしゃいます。つまり、繊維筋痛症とわかるまで、かなり長い時間がかかっています。
現在のところ病因は、末梢における感覚過敏よりも、中枢神経系の疼痛伝達機構の変調、特に下行性疼痛制御経路障害の可能性が高いといわれていますが、詳細は不明です。
では対策についてみてみましょう。
日本線維筋痛症学会がまとめた『線維筋痛症診療ガイドライン2013』「エビデンスに基づく薬物(海外の事例を含む)」が薬物の推奨度とエビデンスについて説明しています。
※「エビデンス」と「欧米推奨度」と「本邦推奨度」の形で、各薬物の評価が示されている。エビデンスIで推奨度A(本邦では推奨度A)が最良。
エビデンスⅠ 推奨度A
リリカ(抗てんかん薬)(本邦推奨度A) サインバルタ(SNRI) (本邦推奨度B)
エビデンスⅡa 推奨度B (本邦推奨度B)
パキシル(SSRI) ガバペン(抗てんかん薬) トラマドール(非麻薬性鎮痛薬) 鍼
エビデンスⅡb 推奨度B (本邦推奨度B)
デプロメール(SSRI)
エビデンスⅣ 推奨度C (本邦推奨度C)
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) テルネリンなど(筋弛緩薬) アコニンサン 漢方薬 モルヒネ
これをみると、鍼は、繊維筋痛症で標準的に服用される薬物と同等のエビデンスと推奨を得ていることがわかります。最近では、専門医でも、薬物と併用して鍼灸をお勧めになるケースが増えているようで、私どもにも病院での対策とあわせて来院される患者さんがいらっしゃいます。
弊院での繊維筋痛症の施術については、こちらをご覧ください。