繊維筋痛症や慢性疲労症候群などについては、きちんとまとめた文章にしたいと思っています。ですので、ここでは雑感的な感じでお読みくださると幸いです・
「疼痛」について解説するのはとても大変なのですが、繊維筋痛症などの激痛は、脳の「下降性疼痛制御メカニズム」の不全が原因の一つと考えられています。で、この場合、末梢にある程度の強さの疼痛を入力することに鎮痛効果があることが知られています。難しいですね。ざっくりいうと、ソフトウェアがうまく動かなくなったときに使う、コンピュータのリセットスイッチのようなものでしょうか。
東洋医学では「火鍼(かしん)」というものが使われます。写真のようにタングステン製の鍼を熱して、短期間肌に刺すというものです。「痛み」というよりは「どすん」というショックを感じます。ノルスパンテープなどのオピオイド系鎮痛剤を手放せないような重度の疼痛症の患者さんに、オピオイド系鎮痛剤と同等の鎮痛効果があります。
火鍼は、東京九鍼研究会の石原克己先生が、北京三通法研究会会長の賀普仁先生と日本に紹介・広められた、かつて中国でよく使われていた処置法です。
石原先生は、火鍼の適応病態として以下のものを挙げています。
寒+気滞(血瘀)
気血虚
気滞+寒湿+血瘀・瘀血を兼ねた経筋病・五臓病・痺症・痿症・皮膚疾患
火鍼はこれらの病症に対して「壮陽・温経散寒・舒筋・通経活絡・行気血」などの働きがあります。火鍼の適応病態を中医学的分類は以下のとおりです。
散寒除湿 寒湿による関節炎・腰腿痛等の痺症
消癥散結 腱鞘膿腫・リンパ結核・子宮筋腫・卵巣膿腫など
益腎壮陽 腎虚腰痛・陽萎・遺精・頻尿・痛経など
生肌斂瘡 瘡口・慢性潰瘍等癒えざる者
祛風止痒 牛皮癬・白班・湿疹など
通経止痛 痺症・腰痛など
解痙止攣 痙攣・抽搐・小児驚風・癇など
除麻 末梢神経炎・肌膚麻木など
宣肺定喘 哮喘・慢性気管支炎・肺気腫など
升陽挙陥 胃脘痛・胃下垂など
温中和胃 胃脘痛・胃下垂など
火鍼の刺法には、次のようなものがあります。
①経穴刺法
弁証取穴・隨証取穴に火鍼を施します。
②痛点刺法
痛点の気血疏通により痛みを緩解できるので、筋肉、関節病変、各種神経痛などに適します。時にやや深く刺鍼します。
③密刺法
増殖性、角質化性の皮膚疾患に利用できます。
④囲刺法
病の局部を取り囲む火鍼法の一種で、刺鍼部位は、病の局部と正常組織との境界です。皮膚科、外科疾患によいです。
⑤散刺法
病の部位に散鍼します。麻木・痙攣・痛症・痒みの疾患に特によいです。また、1~1.5㎝間隔で施術していきます。
さらに、鍼をすぐに抜くか、しばらく置くかの違いもあります。
①快鍼法は、速刺速抜するもの。多くの疾患に利用します。
②慢鍼法は、鍼を1~5分間置鍼します。袪腐排膿・化瘀散結の作用があるため、リンパ結核膿瘤・嚢腫など壊疽組織と異常増生による疾患や、冷えの強い痛みの疾患に利用します。