医学でいう「エビデンス」は絶対ではありません

エッセー

エビデンス(科学的根拠)が直接よい医療とつながる訳ではありません。ドクターの中にはエビデンスを最優先し(俗にいう「エビ固め」)、それを患者さんに押し付ける方がいらっしゃいますが、それは暴力行為(ドクターハラスメント)です。

そもそもEBM(根拠に基づく医療)の定義は、「エビデンス」「患者の状況」「患者の価値観」「担当者の技」を統合することにあります。したがって、エビデンスは治療作業の全体の4分の1でしかないということを、肝に銘じたいと思います。エビデンスは必要条件であっても、けっして十分条件ではないのです。

医学教育の基礎を築いたウイリアム・オスラーは「医療はサイエンスに支えられたアートである」と言っています。医療関係者は、どちらに傾くこともなく、常にサイエンス(エビデンス)とアート(患者の状況・患者の価値観・担当者の技)のバランスを考えていく必要があります。