本当に意味が通じているのか、きちんと考えること

Staff Blog

今日、英語ネイティブの患者さんを拝見していて、気づいたのだけど。

鍼の有効性の説明に「autonomic、sympathetic、parasympathetic nerves」という、うろ覚えの言葉を使って、説明したのだけど、どうもピンとこない様子。

単語の記憶違いかなと、Google君の画面を見せたのだけど「あー聞いたことあるけど、ボク医者じゃないから、その言葉の意味はわからない」と言われた。

それで思いいたったのだけど、普段、私は医療面接で『交感神経が興奮している』とか、『副交感神経が優位になるように』などと説明しているのだけど、これをそのまま英語に直訳しても、意思の疎通ができるとは限らない。

そもそも、私は、英語で患者さんと医療面接をしたことなどほとんどないし、その患者さんの文化のなかで、身体についての知識として「自律神経」などという概念が理解されているかどうか、などという知識もない。

日本人の患者さんとは、TVの健康番組や、日常会話で、これらの単語は一般的に使われていると考えているから、患者さんにもこれらの単語を使って組み立てた概念をためらいなく使っている。

しかし、本当のところは、どうなのだろうか。

共通文化 (この場合は日本文化) 以外の文化圏の方と、コミュニケーションを取る場合の困難は、語学の問題だけではない。お互いの知識や表現習慣が、互換性を保てるかどうか、という困難が伴う。『プリキュア』は「かわいいもの」という前提の人と、初めて見る「ちょっとグロテスクなもの」という理解の人の間では、『プリキュア』という単語を媒介させては、コミュニケーションは成立しない。

さらに言えば、これは外国人との間でだけ、起こる問題なのだろうか。

私は日常的に医療面接で『自律神経』という言葉や概念をよく使うのだけど、これは私が考えているほど一般化していなくて、実は、患者さんは、私の言っていることが、ちんぷんかんぷんなのではないのか。

別に医療だけの問題ではないけど「言葉によるコミュニケーション」の現実と、限界について考えさせられた。