ジャニーズ、ジュリーと五十肩・慢性疼痛

身体へのヒント

私が研修学生だったころ、先生の鍼灸院に60代の女性が「肩が痛くて挙がらない」と来院された。
週末にジュリー (沢田研二) のコンサートがある。「ジュリーは私の青春」で「絶対に手を振り上げて応援したい」との要望であった。

それは水曜日最終の予約で、希望の日まであまり余裕がない。
先生は「じゃあ治してあげるから、ちょっと痛いのはがまんしてね」と受けられた。

通常の五十肩の施術を終えて変化をチェックするが、痛みは多少緩和した程度。依然かなりの疼痛がある。と、先生は10cmくらいの、長く太い針を持ち出して、痛みを訴える逆側の、脛からふくらはぎに貫通させた。

「ぎゃ」と叫び声をあげる患者さんに「よし。腕を挙げながら、一緒に声を出そう! ジュリー!。はい、腕上げて、声を出して」。

患者さんはうっすらと涙を浮かべながら「ジュリー!」と腕を動かす。先生は動きに合わせて鍼を操作する。

3~4分ほど繰り返したあと、先生は、鍼を貫通させたまま「どう?」と声をかける、すると患者さん「あらら、手が横まで上がったよー」とびっくりする。

これをしばらく続けて、翌日再診。
多少痛みが残るものの、手を振り上げることが叶うように。
とっても喜ばれた。

これは「条口承山の透 (とお) し」という。痛む側と逆側で施術することを「巨刺 (こし) 」という。私は、本では読んでいたけれど、そのとき初めてみたのだった。

さて、全身性倦怠と足底の神経性疼痛を訴える女性患者さん。
しばらく通院されているのだけど、先週来院されて、にこやかに「今週末は3日連続でジャニーズのコンサートなんです。体はもちますか? 足の痛みは大丈夫ですか」とおっしゃる。

まだ充分ではないけれど、体調はそれなりに改善していると思えるので「おしゃれじゃなくて、楽なの優先で靴を選べば大丈夫ですよ」と申しあげた。

で本日来院。

ぐったり疲れた様子である。施術をしながら世間話していると「いやー先生とお話ししていると、夢の国から世間に戻ってきたなーという気がしてきた」とおっしゃる。まあ私イケメンじゃないし、なのだけど。

何はともあれ、ぐったり疲れるほど楽しまれて、本当によかった。ひどいときは、掃除がまったくできない、外出する気になれないという状態だったのだ。

以上、例を2つ挙げたのだけど、申し上げたいことは「アイドルと医療モティベーションは、とっても親和性が高い」ということである。「コンサートに行きたい!」という願望が、効果を何倍も引き出すのである。

私どもは、私どもができるかぎりのことをがんばるのだけど、ぜひ病症の対策には「自分のアイドル」をお持ちになることを強くお勧めします。(ほんとですよー)