『臨床鍼灸学を拓く』西條一止・著によると、片いっぽうの合谷(ごうこく:ツボの名前)へ鍼を刺してサーモグラフィーをチェックすると、左右の手から同様に熱が放出されるという反応が起こります。鍼を刺したのは一方だけなのに、両方の手が反応するわけです。不思議ですね。
こうなる理由はよくわからないのですが、鍼の世界では昔からこういう反応を応用して施術を行っています。
巨刺(こし)というのですが、患者さんが痛むという逆側の場所に鍼を刺すのです。右の膝が痛いのならば、左側の膝の同じ場所に鍼をします。すると右側の膝の痛みが薄らいでいきます。巨刺のメリットは、どのくらいの鍼刺激を加えればいいかをチェックできる点です。つまり右側の膝の痛みの変化に合わせて、鍼の深さや刺す時間を調整するわけです。
サーモグラフィーでわかることは体熱反応だけですが、鍼灸師は臨床経験的に熱反応以上の効果があることを知っているのです。