「鍼の効果」とはどのようなもの?

エッセー

鍼の効果とはどのようなものなのか、という質問をよく受けます。答えはいろいろあると思うのですが、以下に私なりの考えを述べてみます。

「鍼を受けると身体が温かくなる」

鍼の目的は「体内に金属片を刺入すること」ではありません。「身体に変化を起こさせること」です。もちろん変化の方向は「健康に向かって」あるいは「正常な身体に向かって」ではありますが、まずは「動かすこと」が大切です。つまり身体を変化させることができるのなら、金属片を体内に刺入する必要はないわけです。

この身体が動いた状態を「気が動いた」といい、その動いたことによって起こる変化は人によって千差万別ですが、例えば、「凝りが取れるとか」「痛みがなくなる」「熱が下がる」とかです。もちろん快方にだけ動くということもなく「くらくらする」とか「吐き気がする」ということも起こります。

このように起こる変化はいろいろですが、共通しているのは「身体が芯から温まった」という感触が得られることです。鍼を受けることで身体が温まったという感触を得るということは、それまでは身体が冷えていたことになり、鍼には身体を温める力があるということになります。

この「身体が温まること」。これが身体の中で起こった生命力の賦活の具体的な感触で、自助による身体力の向上を意味しています。まとめると「身体を温めて、身体力を向上させて、その苦痛を軽くする」というのが鍼の目的になります。

あんま・マッサージ・整体といった徒手で行うものから、電気や赤外線などの器具を使うものまでいろいろありますが、どのような施術でも効果があるということは、その結果「患者の気が動いたから」と理解できます。
ただし「身体の芯の冷えに対してどれほど影響を与えられたか」あるいは「身体を温める力をどれだけ立ち上げられたか」で、その効果の持続性が違ってきます。
赤外線の例でわかるように、外部から熱を与えただけでは身体の芯に影響を与えるほどの本当の力にはならないということは、誰もが経験なさっているのではないでしょうか?

「どの対策が一番いいの?」という難しい質問も受けるのですが、もっとも端的な答えは「身体が温まらないものは、気が動かせていない」ので、このような施術は避けたほうがいいということかもしれません。