東洋医学の目的は、体を「平(へい)」にすること

身体へのヒント

東洋医学では、体の不調は「体の歪(ゆが)み」から起こると考えています。この歪みを正してやることで、体の不調を対策するわけです。

歪みのない状態、つまり体のバランスがとれている状態を「平(へい)」といいます。

平ではない状態(アンバランスな状態)とは、身体のいろいろな要素が、適切な状態にないことをいうわけですが、では何が、適切な状態ではないのでしょうか。

片腕が長い。背骨が湾曲している。左右の目の大きさが違う。足の長さが不ぞろい・・・いろいろなアンバランスが観察されますが、東洋医学でもっとも重視するものに熱の偏り、「寒熱(かんねつ)」があります。

これは体の「熱が適切な状態あるのか」を問題にするもので、このバランスが崩れると、例えば「冷え」や「のぼせ」といった病症が現れます。

また、その問題が体のどこ(位置)に発生しているのかも重要です。頭の方(上)なのか、足の方(下)なのか、お腹側(裏)なのか、背中側(表)なのか。

「寒熱」と「位置」を組み合わせると「頭がのぼせているが、足に冷えがある」というような体のアンバランスが観察されます。この場合、頭の方(上)にある熱を、足の方(下)に降ろしてやることで、熱のバランスを図ります。

筋肉や背骨は、歪んでいてあたりまえ

もちろん、体の物理的な上下左右差も、観察対象です。ですが、それを重視しません。

整体やカイロプラクティクなどでは「骨盤や骨格の歪み」「骨格筋の左右差」などの人体の歪みが、腰痛や膝痛といった整形外科的な病症だけでなく、自律神経失調症など慢性疾患の原因だと主張しています。

私どもの東洋医学では「体は多少歪んでいて、あたりまえ」と考えているので、身体の物理的差を重視しません。

東洋医学では、体内に起こった問題は、自分で正せる力が宿っている、と考えます。
つまり、このような歪みは、体が自力で調整して、正常な動作ができるはずであると。

世間には、背むしのように背骨が曲がっているのに健康的に生活する老人や、隻腕の世界的アスリートもいらっしゃいます。(この件については、こちらも)

これらの例をみても、微細な葉の噛み合わせや、背骨のささやかな湾曲が原因で、耐え難い頭痛や腰痛が発生するというのは、飛躍がある感がします。(この件については、こちらも)

何が悪いのでしょうか?

東洋医学的には、身体の力の衰えのために、この歪みを補正する力が発揮されていない状態と考えます。

では鍼灸の目的とは何か?
身体の衰えを回復し、この歪みを補正する力を発揮させること、となります。
体の歪みを矯正することではありません。

体調の不良を補正し、回避し・・・・という、身体に宿るこの能力のことを「気」と呼びます。

気が東洋医学的のエッセンス

気は、東洋医学の最重要概念ですので、なかなか簡単に説明するのが難しいのですが、ここでは「人体を正常に動かすエネルギーのこと」とご理解ください。

気は、加齢とともに徐々に弱まっていきますが、生きている限り働き続けます。
また、年齢が若いからといって無尽であるわけではなく、枯渇したり、循環不良を起こします。

気の調整を行うと、止痛みはもちろん、背中の物理的な歪みが均されていきます。