東洋医学とはどういうものでしょうか

身体へのヒント
現代医療とは何が違うのでしょうか

現代医療の主流は、西洋医学です。外科学・疫学にすぐれ、人類にとって長いあいだ恐怖の的であった細菌やウイルス感染症への多大な貢献によって、現在の長寿社会を実現しました。

しかしながら、残念なことに西洋医学も万能というわけにはいきません。

例えば、慢性疾患や、まだ病気としての明確な症状が現われていない「未病」といわれる状態においては、適切な対策がない点が挙げられます。

未病には、頭痛、肩こり、腰痛、めまい、耳鳴り、不眠、生理不順、消化不良、便秘、疲れやすい体質、手足のしびれなどがあり、こういった、わたしたちを苦しめている体調不良の症状は「疾患=病気」とは見なされず、明白な対策法を提供してくれません。

対処療法には限界があります


また現代医学は、ほとんどが対症療法である点も問題です。対処療法とは、現在の症状さえ抑えることができればそれでいい、という考え方です。

これはどういうことかというと、根本原因Aがあり、それがBという要因を引き起こし、さらにBがCを、CがDという病状を引き起こしたとします。

ここでいう対処療法とは、Dという病状を切除し取り去るとか、薬を投与してCに働きかけ、それによってDという病状を抑えこんでしまう、という方法です。

これでは、BやAといった根本的な原因を解決するわけではないので、またそこから同じ症状が現れてきます。そうなるとまた手術とか、薬を飲むとかという療法を繰り返すことになります。

腰痛を例に考えてみましょう

「ベッドから体を起こした」「重いものを急に持ち上げた」などのときに、腰部に瞬間的にひどい痛みを感じる--いわゆる「ぎっくり腰」

ぎっくり腰は西洋医学では「椎間の捻挫(ねんざ)」と説明されています。
捻挫とは、骨と骨をつなぎとめている「靭帯(じんたい)」が伸びること、つまりぎっくり腰は、腰の骨をつないでいる靭帯が伸びてしまった状態を意味します。

ところで腰の骨をつないでいる靭帯ですが、これは人体の構成物の中でも、もっとも強靭に作られたもののひとつです。飛んだり跳ねたりすると、体重の何倍もの激しい重力が体幹にかかります。靭帯はこれに抗して体を支える必要があるからです。

さて「ベッドから体を起こした」「重いものを急に持ち上げた」という動作は、「100mを全力疾走する」「ゴルフでドライバーを思い切り打つ」とかいった動作よりも激しいものなのでしょうか? そんなことは絶対にありえません。

ではなぜ「100m走る」「ゴルフでドライバーを打つ」といったことでは起こらないぎっくり腰が、「ベッドから体を起こした」「重いものを急に持ち上げた」といった動作で起こるのでしょうか?

論理的に考えれば「より激しい動作をしても発生しないのなら、それより穏やかな動作が問題を起こすことはない」と思われます。
それよりも、現在の身体に、何か問題があって、それが靭帯を正常に働かせなかったために、ケガが起こった、と考えるほうが自然なのではないでしょうか。

この「身体を正常に動かさせない何か」。これを目的とするのが東洋医学です。図式するとこういう関係です。

[身体を正常に動かさせない何か]→[靭帯が捻挫(ぎっくり腰)]→[激しい痛み]

この式の[靭帯が捻挫(ぎっくり腰)]を対象とするのが、西洋医学。

これは根本の問題ではないと考えて[身体を正常に動かさせない何か]を対象とするのが、東洋医学です。