痛みがなかなか取れない場合の、鍼と運動

エッセー

今日の患者さんは、股関節痛だった。

理学診断をして、閉鎖筋とか梨状筋とか、殿筋回りとか、教科書的な筋肉と関節周りの血流回復をしてみた。で、全体的には痛みの発生箇所は減るのだけど、どうしても、いくつかの動作で激痛が残る。膝を屈曲して回旋させても痛みはないのだけど、下肢をまっすぐにしたまま回旋させると、激痛が走る。歩幅を広くして歩くと、痛みが発生する。

そこで崑崙に鍼をした状態で、その痛みが発生する運動を、続けていただくことにする。運動鍼と呼ばれている施術である。

で、これで劇的に改善した。大股で歩行しても痛みが発生しなくなった。

これをみていて思うのだけど、運動鍼はぎっくり腰などの「急性期」に効果があるという人がいるのだけど、それもそうなのかもしれないけど、何というのか、実体性のない痛みに、効果があるのではないか、と思える。末梢神経的にはすでに痛みは存在していないのに、脳反応として痛みを生み出している、といったような場合である。

このとき、大脳に「本当は痛くないんだよ。痛みを感じているのは、勘違いなんだよ。もう大丈夫なんだよ」と諭してあげる手段が、運動鍼なのではないのだろうか。

痛みを感知する脳の部位が偏桃体であるとするなら、同じ場所の興奮で起こる「恐怖」についても、近い方法で対処できないだろうか、と試している。