身体の痛みなどの不都合は、多くの場合「疲れ」から生じると書いた。
では、どうすれば「疲れ」を取ることができるのか。それは、筋肉の硬結=コリとして表現される、とする。そのコリを、もみほぐせばいいのか、鍼で柔らかくすればいいのか。それで患者さんの「疲れ」が取れるのか。
こういう話になると、よく施術者の心の問題にすり替えが起こる。「心をこめた施術」や「思いやりの医療」といった話である。
同じレシピでありながら、粗雑に作ったラーメンと、お客様のことを思いながら丁寧に作ったラーメンは、どちらがおいしいか、といった話と同じである。後者の方が「きもちよく食べられる」である。しかし、ここで考えているのは、その調理過程の話ではなく、レシピの問題なのだ。
「疲れ」を取るためのレシピについて論じるのは、とても難しい。理由は簡単である。患者さんが「疲れ」を得た理由が、千差万別だからであるし、患者さんの身体的特性も、千差万別だからである。
つまり「疲れ」を取るという標準的なレシピは、ありえない。すべてがオーダーメイドということになる。
これでは、経済効率に馴染まない。サービスを均一化することで、つまりレシピ化することで、提供コストを下げ、利益を得るというのが、斯界のビジネスの鉄則であると思う。