寒いのか、あんまりよくわからないのです

エッセー

気分障害からの回復を目指していらっしゃる患者さんが「久しぶりに風邪をひきました」とおっしゃった。

ー いやー、この陽気にそんな薄着だと、さすがに寒いと思いますよ。

体調が本当に悪いときは、暑いのか、寒いのか、などに関心がなく、服などどうでもよかったのです。最近は、この服じゃ寒いだろうな、とわかるようになりました、と笑われる。

ー あとは自分で適切な服を選べればいいですね。

はい、とりあえず冬物を買いますね。


身体症状が深刻な時は、こういうことがよくあるようにみえます。自律神経失調症とは、こういう身体状態のことを含んでいうのだと思いますし、こうして、回復への道を歩みだされるのだと思います。

でも、失調症が改善しても「適切な服を選ぶ」という社会能力を獲得していないと、やっぱり、風邪を引いてしまう。

社会生活の復活というのは、身体症状の改善と別に、こういう社会性の獲得・回復が必須であることを忘れてはならないと思います。