「エビデンスに裏付けられた鍼の効果」製薬会社が鍼の効果について紹介しています

エッセー

大和薬品という製薬会社のHpの記事からです。引用元はこちら
2005年8月のものですが、よくまとまっているのでご紹介します。
※ 以下、要約の文責は辻本にあります。

・エビデンスに裏付けられた鍼の効果

「腰がいたい」「頭がいたい」「疲れがとれない」といった不調な時、鍼に助けを求めるアメリカ人が増えている。ツボや気血といった用語も、「acupuncture points(ツボ)」「Qi(気)」とすでに英語になっているほどだ。最近では健康ばかりでなく、美容効果も注目されている。エビデンスに裏付けられた鍼の効き目とは……。

・鍼のメカニズム

東洋医学では、人間の体には2000ヶ所を超える「ツボ」があるといわれている。ツボは、心身の健康を司るエネルギー「気血(きけつ)」の通り道「経絡(けいらく)」の上に点在する。
この経絡を気血がスムーズに流れていれば健康を保てるが、逆に滞ると変調をきたし、病気になる。そこで、症状にあったツボを鍼で刺激し気血の流れを整えることで、頭痛や関節炎といった不調や病気が治るというわけだ。ツボを刺激すると、経絡を通じて脳や脊髄に刺激が伝わり、ホルモンなどの化学物質が分泌され体調を改善するといわれる。

・アメリカでは一般化している

2005年に発表された全国紙USAトゥデー、ABCニュース、スタンフォード大学医療センター共同の世論調査によると、アメリカで成人人口の5%が痛みを緩和するため鍼療法を受けているという。また、全米代替医療センター(National Center for Complementary and Alternative Medicine)でも、ここ20年間に鍼療法が急速に普及していることを報告している。

鍼療法を実践している医者の団体「米国鍼療法アカデミー」の登録メンバーも、1991年にはわずか200人だったのが今では2000人を超えるほどに膨れ上がっている。

鍼のさまざまな効果については世界保健機構(WHO)も認めている。臨床実験に基づき発表した「鍼療法お勧め疾患リスト」には、腹痛、便秘、下痢、胃酸過多、胃潰瘍、大腸炎、腸閉塞、不眠、不安症、鬱、自律神経失調症、頭痛、手術後の痛み、パーキンソン病、神経症、関節炎、リウマチ、腰痛、筋肉痛、気管支炎、喘息、風邪、耳鳴り、鼻炎、眼精疲労、白内障、近視、網膜炎、歯痛、咽頭炎、更年期障害、不妊、生理痛、冷え性、血圧、慢性疲労、免疫力強化、ストレス緩和など、多岐にわたっている。

・エビデンスも目白押し

利用者が増えれば増えるほど、求められるのが効果のエビデンス(科学的根拠)。鍼でツボを刺激すると、痛みなどさまざまな症状が緩和されることは、これまでにも数々の研究の結果、証明されている。アメリカ発の最新エビデンスをいくつか紹介しよう。

まずは、男性が原因の不妊解消から。
アメリカで男性の10%が、精子に生殖力がないと推定される。推定300万組といわれる不妊に悩むカップルの約50%は男性の精子に問題があるという。今のところ生殖力のない原因は不明だ。
バークレー生殖・女性の健康センター(Berkley Center for Reproductive Wellness & Women’s Health)の研究結果によると、鍼療法で精子の生殖力が改善されたという。精子に問題のある男性40人を対象に、鍼の効き目を調査。2つのグループに分け、5週間にわたり28人に週2回鍼をし、12人には行わなかった。その結果、鍼を受けたグループに、生殖力のある健康な精子の数が増えていることが分かったという。
一方、女性の不妊症については、2002年に発表されたドイツの研究報告で証明されており、以来、女性への不妊対策に鍼を組み入れる医者が急増しているという。

ひざの骨関節症に対するエビデンスも話題を呼んでいる。NCCAMが資金を提供、内科学誌に掲載された研究報告では、ひざの関節症患者で50歳以上の男女570人を対象に、鍼の効果を調べた。
試験対象者を無作為に2グループにわけ、6ヶ月にわたり計23回の鍼を片方のグループに受けてもらい、もう片方のグループには偽の鍼を受けてもらった。その結果、偽の針を受けたグループに比べ、鍼グループで、8週間後に関節の動きがスムーズになったほか、6ヶ月後には関節の動きに加え、痛みが劇的に改善されたという。アメリカで関節症に苦しむ患者は約2100万人。既存医療との併用による医療効果が大きく期待されている。

そして、腰痛。1980年以降に発表された鍼療法に関する22の研究論文を分析したメリーランド大学医学部の研究報告によると、約2年間にわたりデータを分析したところ、慢性の腰痛の症状改善に効果があることが認められたという。ただし、有効性は施術を受けてから最高で6ヶ月と短期間に限られている。

また、同調査では、鍼療法を受けたグループと、誤ったツボを刺激するといった偽の鍼療法を受けたグループを比較したところ、「偽組み」に比べ「本物組み」で症状の改善が確認されたことから、鍼療法がプラセボ効果でないことも指摘している。腰痛に悩むアメリカ人は約3100万人で、年間の医療費は500億ドルといわれている。

エビデンスに裏付けられた鍼の効き目。健康から美容まで鍼療法への関心は今後もますます高まりそうだ。