気分障害と診断され、鍼灸で改善を図っている患者さんのお話です。
弊院に通われ始めたころ、風呂に入ると、上気して気持ちが悪くなり、長く浸かっていることができない、とよくおっしゃってました。
これは身体の冷えと熱のバランスが乱れていて、それを改善するだけの力が不足しているのだと解釈し、施術を行いました。
施術は、患者さんの状態に合わせて、いろいろな手段を取りますが、代表的なものは、頸椎の7番から胸椎の1番にかけて、いわゆる首の根っこを温めるというものです。
この部分には、自律神経に関係するいろいろな構造が密集していますが、この部分を覆う筋肉や腱が血行不良を起こし、硬化すると、自律神経を圧迫して、安定性を阻害します。
この部分、例えばネコの首根っこを撫ぜてあげると、のどをゴロゴロいわせて、ゴロンと気持ちよくなります。これと同じことです。
身体の冷えと熱のバランスが改善すると、風呂に長く入っても、自律神経が乱れることがありません。こうなると、背中がポカポカして、深く睡眠をとることができます。好循環の始まりです。
逆に首根っこが冷えるとどうでしょうか。
単に寒さを感じるばかりではなく、いらいらと不愉快な感覚がうまれます。この状態では、健全な睡眠を得ることができません。睡眠不足では、不必要な自律神経の興奮が起こります。悪循環です。
このお話からも、冷えと自律神経の動作、そして精神との関係性が考えられます。
「冷え」とは、単純な手足の冷たさの問題ではないことがわかります。