東洋医学をベースとした鍼灸と、整体・マッサージとでは、身体に対するアプローチの「深さ」が違います。両者の違いを、体の働きの面からみてみましょう。
人間の身体は、気・血・津液(水) の3つの要素からできているのですが、そのうち気というのは、詰まったり、運動性が低下したりと、すぐに問題を起こします。
ストレスがかかると、まず問題を起こすのがこの気です。気が詰まると、筋肉の硬直や痛み、だるさが発生し、肩・首こり、頭痛といった症状が現れます。
しかしながら、気は、すぐに問題を起こすぶん、解決も比較的容易です。軽いものなら、深呼吸をしたり、ストレッチをしたり、場合によっては、談笑するだけで軽快になったりします。
マッサージや指圧などの手を使う療法は、温泉に浸かるのと同じように、この詰まった気を解きほぐし、動き出させることが、得意です。「ちょっと疲れたな」という場合は、こういった方法で体をゆるめて、ぐっすりと眠るのがいいでしょう。
しかしながら、気が動かない状態が長く続くと、問題が深刻化します。
気を作りだしたり、気が動くエネルギーを供給する仕組みにダメージが及びます。専門的には、気・血・津液の問題から、臓腑の問題へ深化してしまった状態といいます。
このようなときは、マッサージ・指圧、温泉、気分転換などで体をゆるめても、システム的なダメージがあるために、すぐに効果が消えてしまいます。
こうなってしまうと、身体を修理しなくてはなりません。身体を修理する技術に長けている鍼灸の出番です。
例えでいうのなら、「ちょっと疲れたな」のときは、整体やマッサージ。「身体の調子がへんだな」のときは、鍼灸、という感じでしょうか。
もちろん、鍼もマッサージと同じように、気を動かすことも可能です。
いずれにしても、身体の問題は、慢性化する前に手を打った方が、軽く早く解決できることはいうまでもありません。