これは、安全性に続く、患者さんの最大の関心だと思います。
私どもの答えは「できれば1回で治したい」です。
以下、代金・施術時間について、腰痛を例にお話しします。
施術代をいくらにするか、とっても悩みます
急性期の腰痛、いわゆるぎっくり腰ですが、これはたいていの場合1回で治ります。
1回どころか、発痛原因によっては5分で、場合によっては鍼を使うことなく、痛みが寛解します。
一方で慢性化している腰痛ですが、これは1回で治るのか、通院が必要なのか。1回の施術は15分なのか、2時間なのか。答えは「やってみないとわからない」です。
急性期の腰痛はたいてい1回で治るので、この場合は、いただく代金にちょっと問題が起こります。
私どもは、初診の場合、初診代+施術費ですから、5分でも2時間でも同じ額の代金をいただきます。鍼を刺さなくても、この代金をいただきます。
どうでしょうか。不公平でしょうか。
医療報酬は、機会提供型報酬といって「施術を試みる行為」に対して報酬が支払われます。つまり、治そうが、治さなかろうが、施術を試みるだけで、報酬がいただけるわけです。
これに対して、成功報酬型というのがあります。
治ったら代金が発生する、というタイプです。こちらの料金体系は、あまり一般的ではないようです。
私は、この成功報酬型の方が、医学にはあっているのではないかと思います。
「1回で治したから、2万円だ」とか「1回15分だけいいから、お金が続く限りやってみたい」とか。ちょっと非現代的だとは思いますが、施術代金の矛盾の解決方法のひとつではあると思います。
1回の施術で、どこまでの成果を試みるか
一般の方は勘違いをされているのですが、「腰痛に効くツボ」などというようなものはありません。また「Aという腰痛に効くツボ」「Bという腰痛に効くツボ」というものもありません。
あるのは「Mさんに効くツボ」だけです。また「Mさんに効くツボ」が「Sさんに効くとは限りません」。
つまり東洋医学の施術とは、その方個人に効くツボを探し出し、それを施術しないと効果が得られないわけです。そのためには、それなりの手間をかけて「患者さんの身体の状態」を理解しなくてはなりません。
多くの鍼灸院では、このような面倒くさいことを避けるために「よく使われる腰痛のツボ」に鍼を刺すか、「低周波パルス器で筋肉に刺激を与えて」終わります。
「よく使われる腰痛のツボ」といえば効果がありそうに聞こえますが「万能向け」というのは、「それなり」ということです。
これで治るのか?
それなりの腰痛は、それなりに治ります。ただ、その方法で治った人は、たぶん別の鍼灸院で、別の方法でも、同じように治る。もっとも、またすぐに元に戻る。
斯界は、このような「治りやすい人」を、いかにして確保するかで運営されているようです。
私どもは、急性病は1回で治したい。慢性痛も1回で治したい。だめなら可能な限り痛みを減じたい。がんばる(;´д`) が方針です。
ですが先ほどご説明したように、腰痛の対処法は人によって千差万別です。問診などで可能性を絞り、優先順位をつけて、対処法を試みます。
対処法にはすぐに結果が出るものも、施術にそれなりの時間がかかるものもあります。複数の施術を試みると、それだけ患者さんの体力を消耗します。
したがって現実的な施術時間に合わせて、対処法を選択していきます。
また主訴が腰痛であったとしても、その原因が腰部にない場合は、例えば足や手に鍼を打って腰痛対策を試みます。
その場合の「原因箇所」は、腰痛を起こす原因箇所でありますし、胃のもたれをおこす原因箇所である場合もあります。つまり症状によって施術個所を限定して対処することは、現実的ではないのです。
代金体系を優先させるか、寛解を優先させるか
以上のような理由で「1時間5,000円 以降30分ごとに1,000円」とか「1部所ごとに2,500円」というような料金体系は、寛解ベースに考えると現実的ではありません。
ではどうするのか。
残念ながら、現在はこれらの折衷で運営しています。
・主訴のいかんにかかわらず、代金は同じ額
・施術時間は、1時間をめどとする
・複数の患者を同時に診ない
なかなか経営的には厳しいのですが、寛解を目指すことを本務と考えると他に選択肢がなく、これで頑張ってみることにしました。趣旨にご賛同いただけると幸いです。