鍼灸はどうして効くのか -現代的解釈(西洋医学的解釈)#3

身体へのヒント

(「鍼灸はどうして効くのか -現代的解釈(西洋医学的解釈)#2」からの続き)

前回解説したのは、鍼は交感神経に刺激を与えてることで対策を行う、というお話でしたが、今回は、鍼は脳内の分泌物 (オピオイド) に影響を与える、というお話です。

交感神経や副交感神経などの自律神経以外にも、鍼刺激が脳内の種々の神経に作用を及ぼしています。ハーバード大学のグループは、MRIを用いた臨床研究で、鍼が脳内のモルヒネ様物質(オピオイド;脳内麻薬)を分泌する神経を刺激することを報告しています。

鍼の鎮痛効果は有名ですが、これは鍼刺激によって、脳内からモルヒネ様物質が放出されているためと考えられます。
加えて最近、鍼の刺激が視床下部にも及び、抗ストレスホルモンである『オキシトシン』を放出させることも解ってきました。

肩こり、五十肩、腰痛、膝関節痛などの『慢性の痛み』に対して、西洋医学では鎮痛剤、湿布などで対処しますが、その効果は顕著ではなく、きわめて限られています。さらに鎮痛剤服用による胃痛や、湿布による皮膚炎などの副作用のリスクもあります。このような『慢性の痛み』は、西洋医学の不得手な領域です。

これらの疾患は、鍼灸が第一選択となります。その他、高血圧、不眠、ストレス、うつ病、下痢、腹痛、アレルギー、脳血管障害後遺症などに効果があります。これらに対して効果を発揮する理由として、鍼灸が、自律神経のアンバランスを整えること、免疫系を活性化させること、抗ストレスホルモンである『オキシトシン』を放出させることなどによると考えられています。

これらの鎮痛効果に加えて、嘔吐抑制効果などから、癌の患者さんに対する緩和ケアにも用いられるようになっています。

(次回へ続く)