ある日を境に、身体の調子ががらりと変化する

エッセー

ステロイド剤での調整を欠かせないほど深刻ではないけど、通年的に「痒み」に煩わされる患者さんがいらっしゃる。来院されて、以下のようなお話をされる。


「風が冷たくなったな、もう秋だなと思った夜、風呂あがりに鏡を見ると、かさかさと細かい粉のような小片が浮き出ています。昨夜までは、こんなことはなかったのです」

「真夏の私の肌は、じくじくと熱っぽく、日に当たったり、袖口がこすれたりすると、赤く変色し、指先で軽く掻くと、蕁麻疹のような跡が残り、痒くなりました。こんなことは、秋冬には起こりません。秋冬は、肌が水気をなくし、かさかさと乾燥して、痒みが生まれます」


この患者さん場合は、夏と冬では痒みの種類が違う。気のせいか、春分、秋分の日を境として、かさかさとした痒みが、じくじくとした痒みに切り替わり、それまで奏功していた服用薬が効かなくなる気がする、とおっしゃる。

こういうのは、個人の体質の問題なのかもしれないが、私見では、身体はある日を境に、その状態が真逆に変転するということが、あるようにみえる。

身体表現は同じ「痒み」であっても、その発生機序は異なっているので、同じ治療を続けていても。症状は改善しなくなる。私たちの志す東洋医学の基礎的な考え方には、このような身体状態の観察と、それに対する適切な対応が求められているのだと思う。