抗不安薬の分類とその特徴
抗不安薬は「不安」や「緊張」が、日常生活に多きな支障が出るほど強くなった場合に処方される薬です。
日常的なレベルの不安、緊張に対処する薬ではない点に注意が必要です。
受験の前、重要な顧客との会議を控えて緊張を緩和したい、などといったときに使ってはいけません。
抗不安薬の作用機序・種類
まず代表的な抗不安薬である「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」の作用機序、種類、副作用について、解説します。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬の作用機序には「GABA」と呼ばれる物質が関わっています。
GABAは中枢神経系を抑制する、代表的な脳内神経伝達物質で、ベンゾジアゼピン系薬物にはGABAの脳内作用を増強する働きがあります。ベンゾジアゼピン系薬物が、GABAの働きを強めることで、脳内の活動が緩やかになり、それが心の不安・緊張を和らげることにつながります。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、服用した薬の濃度が体内でどれだけ薄まったかを示す「半減期」によって、短時間型、中間型、長時間型、超長時間型に分類されます。
半減期が短ければ短いほど、迅速に血中濃度が最高点にに達し、その後、すみやかに血中から除去されます。
不安症状のうち、急に強まってきたものに対しては、速やかに症状を改善させるために、短時間型の抗不安薬が処方され、不安症状が持続するような場合は、血液中の薬物濃度を安定的に保つ、長時間型の抗不安薬が処方されます。
抗不安薬の副作用・問題点
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、脳内の活動をスローダウンさせる薬ですから、昼間の強い眠気など、人によっては強い副作用が出現することがあります。
さらに副作用の中でも注意が必要なのは、「依存性」です。
抗不安薬への依存の程度は、条件によって差がありますが、数週間以上・毎日服用していると、薬に対する身体依存が形成されてしまい、今まで以上の量を服用しないと、同じ効果が得られなくなってしまいます。
ひとたび身体依存が形成されると、急に服薬を中止することで「退薬症状」が出現します。激しくイライラしたり、場合によっては、てんかん発作などの深刻な症状が出現することもあります。こうした依存の問題を防止するため、ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、できるだけ短期間の服用が望ましいのです。
抗不安薬の過剰服用にも注意が必要です。
アルコールのような、他の中枢神経抑制効果のある物質をとってしまった場合は、厳重な注意が必要です。中枢神経抑制作用が増強し過ぎてしまうため、呼吸中枢など生命維持に必須な部分までが停止してしまい、命を失う危険があります。
また、薬物によって肝機能低下などの悪影響を受ける身体的問題がある方や、妊娠中の方などは、服用に対して慎重になるべきです。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬一覧
左側は一般名で、()内は商品名です。処方時には()内の商品名が使用されることが多いです。また、薬の半減期は、服用量や個人的要因によって変動幅が大きく、レンジの範囲を出ることもあり、およその目安です。
短時間型(半減期が3~6時間程度)
クロチアゼパム (リーゼ)
エチゾラム (デパス)
フルタゾラム (コレミナール)
中間型(半減期が12~20時間程度)
ロラゼパム (ワイパックス)
アルプラゾラム (コンスタン、ソラナックス)
プロマゼパム (レキソタン、セニラン)
長時間型(半減期が20~100時間程度)
ジアゼパム (セルシン、ホリゾン)クロキサゾラム (セパゾン)
フルジアゼパム (エリスパン)
クロルジアゼポキシド (コントール、バランス)
オキサゾラム (セレナール)
メダゼパム (レスミット)
メキサゾラム (メレックス)
クロラゼプ酸二カリウム (メンドン)
超長時間型(半減期が100時間以上)
ロフラゼブ酸エチル(メイラックス)
フルトプラゼパム(レスタス)
プラゼパム(セダプラン)