つわり--吐気がとまらない、地獄の日々からの解放

身体へのヒント

つわりは、妊娠5週目から6週目に始まり、6~9週目がピーク、12~16週目で自然快癒。
これが標準的なパターンのようです。

吐気・悪心、実際の嘔吐、匂いに対して過敏、食欲不振が主要症状。食事量が極端に不足すると点滴などの対処が必要になります。

今では稀になったのかもしれませんが「妊娠は病気ではない」といわれ、「親になる覚悟が不足しているのが原因」とか「ほっておけば治る」とまで言われた時代がありました。

消化器の不調が終わりなく続く状態は、患者さんの身体体調だけではなく、メンタルをも破壊します。前近代的な精神力に訴えるのではなく、ちゃんとした対策を立てて、不自由な妊婦生活を健康に過ごすに越したことはありません。

つわりの場合まず『妊娠悪疽(にんしんおそ)』を疑います。

妊娠悪疽とは、つわりが極端なために、栄養失調となった状態をいいます。
ただ疫学的には。つわりの発生率が全妊娠の50~80%なのに対して、妊娠悪疽は0.0025~0.005%と極端に低く、まれな病症といえます。

つわりは、原因を特定できないために薬物では対応できません。

一方鍼灸は、消化器系の障害に対する治癒実績がとても高く、逆子と並んで、鍼やお灸でのつわり対策は、昔から妊婦さんに喜ばれてきました。

実は、つわり対策とはいっても、特別な鍼灸をするわけではありません。
患者さんの身体バランスを補正するだけです。

妊婦であっても、健康な女性であれば、極端な体調不良に悩まされることはありません。身体バランスが不良なので、妊娠という身体の環境変化に対応できていないだけなのです。

・身体の冷えのために、消化器が動作不良となった

・生活環境の変化のために身体にストレスがかかり、自律神経が健全に働かない

こういったことのために、つわりが起こってしまいます。

以下、実際の患者さんを例に、鍼灸の流れをご説明します。

患者さんは妊娠14週目。

吐き気が収まらず、吐く内容物がないので胃液を無理に出すため、痛みが激しい。仕方がないので、無理におかゆを食べそれを吐くと少し楽になる。午前中より、午後夕方が辛い。「辛くて辛くて、こんなに辛いと知っていたら子どもなんて作るんじゃなかった」とおっしゃる。

婦人科では「もっと痩せだしたら点滴をするから、そしたらおいで」といわれた由。

ただ、お話を伺っていても、切迫感はあまりなく、冷静な感じがする。
触診すると身体はたいへん冷えているが、それの自覚は乏しい。

そこでこの患者さんは、環境変化によるストレスよりも、無自覚の冷えのために消化器の動作不良となっている、と判断。

身体の反応を見ながら、百会・三陰交・陰陵泉に鍼
内関に鍼をしたあと置き鍼
神闕に知熱灸を3壮

このあと、足三里に灸頭鍼をして、少し鍼を操作すると、腹鳴が始まる。
最後に、神門と自律神経に耳鍼をして、施術は終了。

「詰まっていたお腹が動き出したみたいだ」「天気がいいので、散歩しながら家に帰る」と喜ばれる。

この患者さんの場合、巡り合わせがうまくなくて、対応が遅れ、必要以上に辛い思いをされたようにみえました。