たまに、病院へ連れて行かれる。
病院は好きじゃない。(一般に、病院が好きな動物はいない。)
どうして病院が好きじゃないんだろう。
それは、僕が元気だからだなぁ、と思った。
いや、元気になったのだ。
元気じゃないとき、病院は救済の教会である。救いの女神である。
「辛いのは君のせいじゃない。このウイルスのせいだ。ケガのせいだ。」と、言ってくれて、これを飲めば元気になるっていうお薬をくれる。
「どうして風邪なんか引いたんだ」って責められることも「早く治れ」って脅されることもない。
先生は、僕の「治りたい」って気持ちに応えてくれる、頼もしい人だ。
元気なとき、病院は、僕の気持ちを置いてけぼりにする。行きたくないとか、検査は嫌だとか言っても、無理やり台の上に乗せられて、飲みたくない薬を飲まされて、注射を打たれる。生き物として、扱われていない気持ちが、する。
『病気のときはあんなに優しかったのに、先生たちは、僕のことなんか、どうでもいいのだ。たくさんいる個体の一匹に過ぎないのだ。』そんなふてくされた気持ちになる。
病院は、この世界に絶対に必要だ。だが、医療従事者でも、患者でもない人の居場所はそこではない。そんな気がする。
元気な人は入院しててはいけないし、元気になった人は退院するべきなのだ。
居心地がよくても、悪くても。
自分を含めて、みんなのために。