女性特有の症状や、自律神経失調は、穏やかに体調を整える東洋医学がお勧めです。
不妊症、生理痛、生理不順、子宮内膜症、子宮筋腫、そして更年期障害。婦人科系疾患では多種多様の症状があります。
さらに、冷えやむくみ、肌荒れ、腹痛、便秘、イライラといった周辺症状にも悩まされます。
産婦人科専門医・漢方専門医・産業医でいらっしゃるにしむら先生のお話。婦人病について、俯瞰的な立場からお書きいただきました。
婦人科系疾患の施術方針
東洋医学では、体の中を循環している、気(き)・血(けつ)・津液(しんえき=水のこと)の不調やバランスをチェックします。
特に婦人科系疾患の場合、気の流れが詰まっている、血の循環が悪い、水分の代謝がスムーズでない(むくんでいる)といった症状がみられます。
東洋医学では個々の症状ごとに対策を行うのではなく、その症状を起こしている体質を対象としていますので、一つの施術で複数の病症に対しての効果が期待できます。
では具体的にどのような施術を行うのか、生理痛・生理不順と更年期障害を例にご説明します。
生理痛・生理不順
生理に関する不調は、西洋医学的には主に、ホルモンバランスの乱れによって子宮が強く収縮してしまうこと、骨盤内の血流が悪くなることが原因と考えられています。
痛み以外にも、冷え・のぼせ、頭痛、動悸など様々な病症が起こります。
東洋医学では月経に関する病症は、血行不良の瘀血(おけつ。汚れた血が溜まった状態)が主な原因であるとされてきました。
ただし最近はストレス社会を反映しているのか、気の異常である気虚(ききょ。気が不足した状態)や気鬱・気滞(きうつ・きたい。気の流れが障害された状態)、気逆(きぎゃく。気の流れが逆行した状態)が根本にあり、その気の異常が血の異状を引き起こし、月経不順を招くというケースが多くなっています。
「ストレスがない生活をする」というわけには、現実的にはいきません。鍼では、詰まった気の流れをよくしながら、不眠や冷えなどによる症状の悪化を防ぐ。さらに血の滞りを解消するという、体質の全面的な改善という施術を行います。
生理に関する不調は、背後に重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
例えば、稀発月経(月経周期が24日以下)の場合は、卵巣や下垂体(脳の下にあるホルモンを分泌する器官)などに問題があることがあります。
極端な頻発月経の場合は無排卵が、月経量が多い場合は子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜増殖症などの病気が疑われます。
そのほか、甲状腺の病気(バセドウ病や甲状腺機能低下症など)や肝臓病、糖尿病などが原因で月経不順になることもあります。
無月経(続発性無月経)は、過度なストレスや極端なダイエット、肥満、スポーツのしすぎなどによる無排卵が原因で起こることもあります。
いずれにしろ深刻な病症の場合は、婦人科系の病院で診察・検査を受けることをお勧めします。
更年期障害・不定愁訴
更年期障害も、さまざまな不調に苦しめながら、不定愁訴と診断されて有効な施術を受けることがかないません。
更年期障害の症状、頭痛・肩こりは血の流れが滞る瘀血(おけつ)、めまい・気力や集中力の低下・睡眠障害・耳鳴りなどは血が不足する血虚(けっきょ)、のぼせ・ほてり・頭痛・動悸などは気の流れに異常が生じる気逆(きぎゃく)と捉え、これらを鍼やお灸を使っていきます。
また体に冷えが見られる場合、棒灸などを使って輻射熱(ふくしゃねつ)で患部をじんわり温めていきます。