女性の身体の異常と正常 – 医療ってなんなんだろう

ここでは『婦人科』をテーマに、どのようなことを知り、どう考えると、自身の身体についての理解が深まるのか。一般的にはあまり語られない、多少専門的な内容を含むお話をしたいと思います。

婦人科を取りあげる理由は、ふたつ。

ひとつは、この問題を深く考えるきっかけになった投稿を拝見したこと。「婦人病」の問題は、医療当事者はもちろん、現代社会生活を送るすべての人が考慮すべき「身体と実人生の葛藤」の問題を象徴しているという自覚です。

もうひとつは「婦人病」にまつわる、いろいろな疑問についてお答えいただける、専門医のにしむら先生のご協力を得られたこと。

にしむら先生について

にしむら先生は、産婦人科専門医・漢方専門医・産業医。現在、京都市で『にしむら漢方内科クリニック』を開院していらっしゃいます。

先生のクリニックのHPはこちら。Instagramはこちら、@fuminishimura1007 です。

 
先生のお話が、少しでも皆様の参考になることを願っています。

にしむら先生の投稿一覧です
#99 このコラム目的。質問の回答
各投稿は、テーマタイトルをつけていますが、そのテーマを中心に、婦人科一般から医療全般に関するものまで、話題が多彩に展開されています。内容を、そのテーマに関してだけに切り分けた方が、利便性が高いと思うの...
#98 解剖・生理概論
にしむら先生の解剖・生理概論の講義を公開します。先生が、出版原稿として用意されていたものです。ここに公開する理由は、以下の通りです。一般に、教科書には大きな欠陥、不満がある。医療関係のものも、その宿痾...
#97 番外編:生物学的な男女…オスとメス…の違い
昔、大学院生のころに、学部生向けの教養講義にもぐり込んで、生物学的なオスとメスの違いについて、なんていうオムニバス講義を聴講したことがあった。例えば、魚なんかでは、わりと性別の転換をすることがあって、...
#96 番外編:目の話
目の話を書いてみよう、と思う。目だぜ。産婦人科医だか漢方医だか知らないけれど、目、って正気かよ、って言いたくなる。どう考えたって、そこはなかなか、関係無いだろうに。ねえ。そうは言うのだけれど、それなり...
#95 番外編:生命科学の実験室風景
大学院で研究…の真似事…をやっていた時に、どんな道具立てだったか、っていうのを、ちょっとまとめてみよう、と思った。こういうことを整理することで、生命科学の研究っていうのは、「何を見ているのか」ってのが...
#94 番外編:汗や体臭、排泄物の匂いの話
辻本先生から、また大きなお題を頂戴した (質問は文末に)。体臭と汗の話。そして、排泄の匂いの話。これはけっこう難しい話になるのかもしれないし、私もどこまで答えられるのかわからないけれど、ちょっといろい...
#93 番外編:心肺蘇生と、葬送についての雑感
※ 死・延命処置・蘇生医療などについて言及しています。ご注意ください。ちょっと散歩していたら、公園に消防車が止まっていた。消火器の使用訓練をやっていたみたいだった。その横では、人形がひとつ、地面に置い...
#58 湿疹と、じんましんの話
皮膚の湿疹の話を、そういえば書いてなかったなあ、って思い出したので、久しぶりに書いてみようと思う。アトピー性皮膚炎、とか、じんましん、とかって、やっぱり皮膚科の診療としてはけっこう難しいことになってい...
#57 ワクチンの影響について
辻本先生に「ワクチンの影響」って話についてのリクエストを頂戴した。ここ数年の「ワクチンの影響」って話題になっているのは、ひとつは「新型コロナウイルス」に対する「mRNAワクチン」と、そしてもうひとつは...
#56 しびれの話
わたし(にしむら)は、産婦人科医、で、漢方医、ってことになってる。「なってる」ってなんだよ、って部分はあるのだけれど、まああまり面倒くさいことを言わずに、肩書きを載せてきた。「お仕事は?」って訊かれた...
#55 ホットフラッシュのこと
更年期障害のうち、ホットフラッシュ限定での話、っていうのを辻本先生にリクエスト頂いた。ホットフラッシュ、って、なんなのか、ってことを考えると、ちょっと難しいのかもしれない。英語ではhot flash,...
#54 乳腺炎を巡るいろいろ
産婦人科の話題っていうのは、もっぱら臍から下の話題に限られている。のだけれど、例外がある。そんな例外の話をしようか、と思う。乳房の話である。産婦人科医が乳房に関わるときというのは、産後の乳腺炎とか、そ...
#53 出生前診断のことなど
遺伝性腫瘍の話をこないだちょっと書いてみたのだけれど、やっぱり遺伝子についてのご相談っていうのは、ときどき、ある。産婦人科で出てくるのはいわゆる「出生前診断」っていうのが、その一番有名なやつになるのだ...
#52 医療全般:生命科学系の論文を読んでみる
こないだ、SNSを見ていたら「甘いカフェイン飲料は…」っていう記述があった。どうやら、そういう話で論文を書いて、ネイチャーに収載されたらしい。わたしが最初に読んだのは、読売新聞の記事( )だった。これ...
#51 医療全般:がん家系なんですけれど…
がん家系、っていうのにもいろいろあります。たまたま、ご家族がみな「がん」になっておられた、という「それぞれの方が別々の事情で発癌されていた」偶然が重なっただけ、という家系もあるでしょう。いやいや、そう...
#50 生理痛って、婦人科? 内科?
一般に、生理前にお腹が痛い、というときは、婦人科に行くのでしょうか、敷居が高いときは内科でいいのでしょうか。そもそも、内科って何を診るところなのでしょうか。  生理…月経に関連する話題であれば、内科を...
#49 医療全般:鎮痛薬の買い方
生理の痛みで、鎮痛剤を手に入れたいというとき、医師に診てもらって、処方薬を飲んだ方がいいのか、ドラッグストアで安売りしているものを買ってもいいのか。そもそも内容物は同じなのでしょうか。効力に差はないの...
#48 医療全般:どの病院に行けばいいのか、迷う
どの病院に行けばいいのか、ということについて、アドバイスいただければと思います。 見回すといろいろな専門科の病院があり、一方で総合病院もあります。これは医師には関係ないかもしれませんが、ネットには評判...
#47 医療全般:健康診断について
正社員の方は、社保の健康診断を受けない方は少ないでしょうが、非正規の方とか、アルバイト掛け持ちで、みたいな方とか、年齢にもよると思うのですが、症状はないのに事前に検査するってコストと比較して、どう考え...
#46 医療事故と医療安全の話
現代の医療の世界では、時々エラーが起こる。そういうエラーのことを、ぜんぶひっくるめて「医療事故」と呼ぶことが多い。原因はいろいろあるし、結果もさまざまなことが起こっている。医療事故とひとことで呼んでい...
#45 睡眠についての、いくつかの質問
寝ている間に、何が起こっていて、何が身体に重要なのでしょうか規則正しい睡眠をとることと、寝たいときに寝て、眠くなければ寝ない、という生活の差は、何なのでしょうか 睡眠時間は、長くとればとるだけ、身体に...
#44 癌の標準治療を選ばないひと
癌の診断を受けている方が、なぜ、標準治療を受けないまま、「手遅れ」になってしまう、ということが起こるのか?って話をちょっと、書いてみようか、と思う。 これは本当にいろいろ難しい話が入っていて、一筋縄で...
#43 ストレスについて
ストレスってなんだろうってことを、ちょっと考えてみたい。なにかからだの不調があって、でも、いろいろ調べてみても、あまりはっきりした原因が見つからなかった時、「ストレスでしょうかねえ」とか「ストレスです...
#42 いわゆる「あやしい」話について
ほら。漢方やってたら「気」って話をけっこうするんですけれど、あれって西洋医学とか科学の枠組みでは「存在が証明されていない」ってことになってるじゃないですか。気なんてものは無いんだ、っていうひとたちもけ...
#41 帝王切開と、さかごの話
妊娠・出産を経験したことのない、女性の鍼灸師の方からの「聞きたいけど何をどう聞いていいかわからない」的な感想がありました。鍼灸は逆子に効果があるという評判があって、一方では「至陰への灸」程度の知識しか...
#40 妊娠中絶と身体への影響
堕胎経験は、その後の「生理」に身体的な影響を与えるのでしょうか。妊娠の確率が変わるものなのでしょうか。罪の意識の有無による差はあるのでしょうか。ご質問を頂戴していたのでした。堕胎…というのは法律の用語...
#39 EBMの話をしてみる
医者が医療の中でどんなことを考えているのか、っていう話のついでに、EBM、ってのの話をしてみようか、って思う。EBM、エビデンス・ベースト・メディスン。エビデンスに基づいた医療、ってのが日本語訳になる...
#38 五臓の話
漢方と五臓の話をちょっと、するね。西洋医学の医者で、漢方やってるわたし(にしむら)が、五臓ってのをどういう感じでとらえているのか、っていう、雰囲気が伝わったらうれしいな、って思うので。五臓ってのは肝・...
#37 東洋医学とは
#36で、「初学者が東洋医学と西洋医学を混ぜるのは危険」っていう話を書いたのだけれど、それぞれ、一応の体系がある。すごくざっくり「東洋医学」って呼んでいるけれど、たとえば、有名なところで言うと、中国医...
#36 西洋医学と東洋医学、混ぜると危険
鍼灸師です。学生時代、西洋医学系の教官からも、東洋医学系の教官からも、両者は「混ぜるな、危険!」と強調されてきました。初学者にとっては、まったく別の体系の理論を、用語が似ているからと、つなぎ合わせて使...
#35 男女の産み分けって可能なのでしょうか
知り合いのお宅は、男の子ばっかり三人とか四人とか。そういうところの「肝っ玉かあちゃん」みたいなご家庭も結構ありました。お産の時に、「男の子ばっかりで…次は女の子が欲しいけど…でもきっとまた男の子だと思...
#34 ふれることの倫理
『手の倫理』伊藤亜紗 という本を、以前購入していたのだけれど、先日、ちょっとしたきっかけがあって、改めて読み直してみた。「ふれる」ことと「さわる」ことの違いとか、それぞれのあり方とか、そこにまつわる心...
#33 湿潤療法と糖質制限
私が医学生だったか、研修医だったか、くらいのときに、湿潤療法というのが流行り始めた。『傷はぜったい消毒するな』 が2009年の出版だから、ちょうどその前後、「新しい創傷治療」 というWebサイトで夏井...
#32 男女の違いとそのグラデーションについて
男女の違いには、グラデーションがあるちょうどこの文章を書いている時に、パリではオリンピックが開催されていて、女子種目に出ていたなんとか、っていう選手が「本当は女性じゃないんじゃないか」みたいな話題が盛...
#31 検査では異常はありませんでした
「検査では異常はありませんでした。」って、そういう言い方、あるよねえ。未病学会は、そういうのを「未病」の一つだ、ってことにしているらしいし、自覚症状があるのに、客観的にそれを肯定するような検査結果が得...
#30 ホルモンバランスのみだれ、という表現について
ホルモンバランスのみだれ、って、そういう表現をわりと耳にすることがあるんだけれど、じゃあ、あれ、具体的にはどういうことなのか?って考えたこと、ありますか?似たような言葉としては「自律神経のみだれ」なん...
#29 月経血と月経痛について
以下の質問をいただきました。「月経血」と「血塊」って子宮内膜の剥離面からの出血で、内膜の破片が「血塊」なのでしょうか。うーん。これねえ。実際のところはわからんのよ。どうわからないか、っていうと、脱落し...
#28 妊娠中の糖代謝異常について
妊娠中の異常って、「妊娠合併症」って呼ばれるものが多いのだけれど、一部に「合併症妊娠」って呼ばれるものがある。(本当に紛らわしい名前で、両方、本が出版されているのだけれど、たしか後者だけが改訂されて再...
#27 産後の骨盤矯正について
骨盤矯正のような、身体の回復を図るような医療系?サービスがありますが、これは必須なのでしょうか。医学的に、出産を経験すると自然に元に復さないほどのダメージを受けるのでしょうか。 骨盤矯正の話、ねぇ。い...
#26 卵巣嚢腫にまつわる体験
辻本先生からのリクエストは、わたしの臨床における葛藤について…なんていう話をちょうだいしたので、しばらく考えていたんだけれど、思い出した話があった。卵巣嚢腫、って、昔は双手診といって、腟の方に指を入れ...
#25 月経の仕組みと不妊治療
わたし(にしむら)は、産婦人科領域の4つの領域、っていう、「腫瘍」「生殖内分泌」「周産期」「女性のヘルスケア」の中でも、「女性のヘルスケア」…のまた一部に偏った専門性があって、まあ、漢方の話をメインで...
#24 妊娠時の体調変化のメカニズムと、注意点
辻本先生から、「妊娠中の体調のことについて書いて欲しい」っていうリクエストを頂戴した。つわりの話とか、妊娠中毒症の話は別の項目で書いたので、まあ、あとはいわゆる「マイナートラブル」って呼ばれるものと、...
#23 産後の話
産後の話も、辻本先生からリクエストがあった。産後って、何の話をしようかしら。お産の話はねえ。なかなか産婦人科医とか助産師じゃないと、関与できなかったりするから、ちょっと横に置いておきたい(とはいえ、鍼...
#22 子宮癌の話
子宮癌の話を、まだしていなかったんですよねえ…。子宮癌って、大きくわけると「子宮頸癌」と「子宮体癌」っていう二つくらいに分類される。もちろん、実態はもうちょっとややこしくて、癌じゃない悪性腫瘍の「肉腫...
#21 性感染症の話-3 (HIV感染症とAIDSについて)
感染症の話を書いたときに、HIV/AIDSのことについて書き忘れていたことに気づいた。私自身がHIVについて、そんなに臨床で触れてきたわけじゃない。医学部に居たことや、大学生時代に生命倫理のゼミで議論...
#20 性感染症の話-2
感染症の概論が長くなってしまった。そろそろ、いいかげん、性感染症ってなんだい?って話をしよう。つまりSTDとかSTIの具体的なはなし。定義としては「性行為によって感染するのが性感染症」以上!ってことに...
#20 性感染症の話-1
性感染症の話、って話題にリクエストを頂戴したので、ちょっといろいろ整理してみよう、って思う。のだけれど。結構分量多くなるのよ。まあ何回かに分けて話をすることにしようか。ひとまず、性感染症について、公式...
#19 妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)の話
妊娠中毒症…っていうのは、ずいぶんと古い物言いで、今は「妊娠高血圧症候群」って呼ばれている。さらにその昔は「前期妊娠中毒症」「晩期妊娠中毒症」ってそれぞれ言われていて、この前期…ってやつは、今の妊娠悪...
#18 子宮筋腫について書いてみる
辻本先生の意向をおたずねしたら、ここのエッセイで、婦人科の疾患について網羅してほしい、って言われてしまったのでした。いや、ねえ。そんな。さあ。ほら。一般的な疾患の紹介とか説明って、あちこちにあるじゃな...
#17 子宮内膜症について
子宮内膜症ってのについて、ちょっと書いておこうか、って思っていたんですよ。産婦人科医が病気のことについて説明します、って言っておきながら、そういう「器質的」な疾患の話、ほとんどしてなかったですよねえ…...
#16 不定愁訴と触れること
ありがたいことに、いくつか質問してくださった方もあったようで、わたしが考えている事、考えたことがなかったこと、いろいろ混ざって良い刺激になってます。間をとってくださってる辻本先生、本当にお手数おかけし...
#15 怒り…イライラについて
産婦人科医が怒りのことについて話するって、変?まあにしむら先生ならもとから変だったからねえ…ってことで許してほしい。私がアドラー心理学の勉強をちょっとやってた、って話はしてたっけ?微妙にそういう言い方...
#14 治療契約と課題の分離-2 + 公衆衛生について
課題の分離、ってのは、本当に大事なポイントで、前回は治療契約、っていう文脈の中でそれを語ったわけだけれど、それは、いったん分離した課題を「共通の課題」っていう形にしようね、っていう形で共有することの約...
#13 治療契約と課題の分離-1
治療契約、って話をちょっと書いてみる。治療契約、って、医療ではあまり言わないんですよねえ。治療…の話なのに?って思うでしょ。思わない?そうか。思わないか。じゃあ、どこで治療契約って話が話題になるか、は...
#12 産婦人科の対象となる疾患
いったい、にしむらセンセはどのくらいの話をする予定なのか…みたいな、概観ってのをやった方がよかったのかしら。ってことでいまさらなんだけれど、産婦人科の対象となる疾患?産婦人科の専門領域?みたいなものの...
#11 つわりについて
つわりについて、いろいろ書いてまとめてほしい、って、辻本先生からのリクエストがありました。つわり、ねえ。いやさ。大変なのよ。つわりの話って。私が大学院で研究をしていたことは以前もちらっと書いたのだけれ...
#10 月経前症候群について-2
ええと、月経前症候群(PMS)の話をしていたんだけれど。私の臨床経験でいうと、月経前症候群(PMS)でしんどい思いされている方の多くが、みなさん、頑張り屋さんなんですよ。本当にね。仕事なんかも頑張って...
#09 月経前症候群について-1
月経前症候群について、あらためて書いてみることに、しようかと思ったのだけれど。月経前症候群とかPMSって、わりと新しい概念だと思っていたのだけれど、実は古い看護学の教科書にも載っていた。どのくらい古い...
#08 月経と不正出血
「今のこの出血が月経かどうかが知りたくて来たんです!これは月経で良いんですよねえ!?」 産婦人科で仕事しているとそういう話が時々あります。 じゃあ、月経かどうか、ってどうやって判定するの?って話になる...
#07 正常の基準が動く話
正常と異常、って話を「多数決」の話だ、ってことに決めてしまうとしよう。っていうと、すごく妙なことになってくるよね?って話がいろいろあるんだけれど、正常の基準が時代とともに変化してきたものはたくさんある...
#06 正常の月経の話など
辻本先生が、前書きのと