(腰部) 脊柱管狭窄症は、おもに加齢性の変性脊椎すべり症、変形性腰椎症によって、脊椎管が狭くなり、そこを通る神経が絞扼されて症状が発生します。
ひとつの神経根障害により下肢・臀部の疼痛を特徴とする神経根型と、両側の下肢・臀部の痺れや異常感覚 (冷感・灼熱感・絞扼感など) を特徴とする多根性障害の馬尾型があり、その混合型もあります。
主な症状
脊柱管狭窄症は、腰椎を後屈させたときや、立ち続けたときに、下肢に症状が出現しやすく、これは、椎間板ヘルニアが、座っているときや、前かがみの姿勢で現れるのと区別しやすい点です。
洗濯物を干す作業 (腰椎後屈位)や、電車通勤や台所仕事 (立位維持)、背筋を伸ばした歩行で症状が出やすく、いっぽう、自転車に乗ったり、押し車を使うなど前かがみの姿勢での歩行では症状は出にくいです。
脊椎管狭窄症で最も特徴的なのが、間欠性跛行 (かんけつせいはこう) です。これは、歩行を少し続けると、疼痛と、疲労感が強くなって、歩き続けることができなくなり、少し休むとまた歩けるようになる、というものです。
原因の場所
責任部位 (病症の主因である狭窄を起こしている場所) で一番多いのは、第4/5腰椎の間ですが、整形外科などで診察を受けた場合は、この場所を確認してください。鍼灸治療を行う際の重要なポイントとなります。
鍼灸での基本治療
「外科手術をすることなく、各組織の血行を良くすることで、鎮痛する」
これが鍼灸施術での第一目的です。
先ほど説明した責任部位の神経根と、痛みや痺れを発生させている末梢神経領域の両方に鍼をします。
上の図では、腰椎の3番と4番の間と、4番と5番の間の刺入位置を示しています。
図をご覧になると、よくおわかりいただけると思いますが、ここで神経 (図では、黄色で示す) が腰椎から外に別れ出ます。この部分に圧迫が加わると、下肢にさまざまな痛みが生じます。(図では、神経根が見えるように、周辺の筋肉を取ってあります)
また、神経近くに鍼をすることで、神経の経路にひびきと呼ぶ刺激が走ります。このひびきも重要な治療過程です。
これらの刺激によって、神経根周囲と神経管内の両方の血行改善を図ります。
必要なら、臀部や下肢などの発痛部位にも鍼を刺し、場合によっては低周波のパルスをかけます。
このような鍼刺激は、痛みの閾値を下げる効果と、神経の血流を改善する効果があり、直後効果はもちろん、治療を続けることで累積的な症状緩和効果も認められています。
歩行困難に対する対策
また脊柱管狭窄症の方は、歩行に重要な働きをする大殿筋、中殿筋、小殿筋が硬縮してしまっていることが多く、特に小殿筋が動かなくなり、10分間も歩けない、という状態になってしまいます。
これらの筋肉をよく観察し、ツボや硬結、トリガーポイントを選んで、鍼を刺入します。
(c) Human Anatomy Atlas, Visible Body