中世について、かなり専門的な本である。噛み応えがある。
熊野詣、修験神楽、法華経注釈、天皇即位灌頂など、いわゆる「神仏習合」の展開の細部について、一次資料から解読する。この時代における「闇」とは何か「救済」とは何かについて。
さすがに宗教思想史の専門家を目指しているわけでも、それについて学ぶのが趣味、というわけでもないので、読み込むのには多少の忍耐が必要だった。それでも、よくわからない、腑に落ちない、あの時代について、何かをつかめればなー、と。
つまるところ、私が知りたいのは「あの世」とは何か、ということである。
「あの世」と「この世」が隣接していた時代がある。交錯していた時代がある。その時代、人間は何を考えたのか、ということを知りたいのである。
密教的世界観、神と仏の習合の時代、阿弥陀信仰・浄土の時代。これが古代と中世の境界線の前半部なのではないか、と思うのである。