スマート・ウォッチと鍼灸

エッセー

スマート・ウォッチというのだろうか、心拍や睡眠状態をモニタリングできる機能の付いた腕時計を、お使いの患者さんが増えてきた。おそらく半数を越えていると思う。

個人的にはそこまで身体状態をモニタリングする必要性と、常に何かを体に巻き付けておく不快さとを、天秤にかけている。ガシェットと割り切るには、価格が張るし。

スマート・ウォッチの不正確性を持って、医療機器とは呼べない、という意見もあるだろうけど、夜間の不整脈を自分で見つけ、早期の手術で命脈を保った友人もいる。高血圧を指摘された私の家族は、オムロンの血圧計を使って、朝晩3回ずつ計測しているけど、150→130→110となることもまれではない。それを見るたびに、こんな雑な身体指標って意味があるのか、と思う。

まあ、レントゲンとか、血圧とかって、たぶん100年前の医療技術なのだろうけど、枯れた技術でもあり、簡便で、経済的でもあるので「致命的な何かがみつかりゃラッキー」程度の理由で、いまだに使われているのだろう。スマート・ウォッチと似たり寄ったりだと思う。

3年ほど毎週通っていただいている患者さんは、夜半にどうしても目が覚めてしまう。そこで、Apple Watchで自分の睡眠リズムを計測してみたら、途中覚醒するのは必ずノンレム睡眠のタイミングであることをみつけた。そこで、いろいろ仮説を立てて、鍼灸施術と、お飲みになっている漢方薬の組み合わせで、改善できないか、いろいろ試している。ここらあたりについて、医療論文は出ているのだろうか。

個人的には、エストロゲンとかプロゲステロンとかのホルモン濃度を、オンタイムでモニタリングできる簡便な装置が、廉価で発売されたらな、と思う。法律や、安全基準があまりに煩瑣で、業界は寡占化が進み、医療関連の器具に価格革命が起こる可能性が乏しいのが、残念極まりない。

話が迷走しているが、現在のストーマを見ていると、もっと改善の余地があるだろうにと、やるせなくなる。医療機器メーカーにはまったく期待できないので、スマート・ウォッチ的なジャンルを応援したくなる。