冷えには種類があります

身体へのヒント

ところで体の冷えとは何なのでしょうか。何が原因で冷えが起こるのでしょうか。

冷えの理由は大きく分けると、次の2種類があります。

   1 体の各部まで熱を運べない
   2 体を温める熱が乏しい

1 は、「頭は火照るけれど足先は凍える」とか、「足はそうでもないけどお腹が冷たい」というような方が典型。体の中には熱はあるのですが、それを運ぶこと、循環させることができず、体の一部が冷えてしまっている状態です。

2 は、高齢者、出産した方、長く患った方、とても痩せていて体力がない方によくみられます。体が芯から冷えてしまって、温めるだけのパワーが失われている状態をいいます。

このどちらのタイプの方も、東洋医学で対応できますが、処置法がまったく異なります。

体の各部まで熱を運べない方

これにも2種類あります。

   1-1 熱を動かす力が弱い
   1-2 熱の伝達経路が詰まっている

1-1 は東洋医学的には「気虚(ききょ)」と呼ばれるタイプで。身体が疲れている、弱っている方にみられます。2 とは違って、体に熱はあるものの、運ぶ力が弱すぎて、それを体のすみずみまで運べません。お風呂を焚く例でいえば「上だけ熱く下は水のまま」のようなパターンです。かき混ぜてやらなければなりませんが、その力がありません。

1-2 は、ストレスや使い過ぎなどで体が硬くなり、冷えてしまうタイプです。現代人は誰でもストレスを抱えているわけですから、ほとんどの方にみられます。
ただ、体に故障があるわけではないので、わりと簡単に対処できます。マッサージや暖かいお風呂で体をゆるめたり、気分転換に大騒ぎをするといった方法が効果的です。

先に例を出したホカロンや暖かい飲み物は、1-2 に有効です。自律神経に刺激を与えて、冷えて固まった体に熱の循環を復活させてくれます。

ただし、つまりが激しく、慢性化すると、専門的な対処が必要になります。詰まり→冷えの発生→血の異常というように進行すると、痛みをはじめとする多岐多様な症状が発生します。

体を温める熱が乏しい方

お風呂の例でいうと、火力が弱い状態、温めるガスの量が乏しい状態です。

体の熱は東洋医学では「腎(じん)」がとても重要な役割を果たします。
この力は加齢とともに減少しますし、出産時に熱エネルギーを胎児に分け与えるため母体から熱源が失われます。

この場合、冷えの対処も重要ですが、それ以上に腎機能を養わなければなりません。

触ると冷たいところが「冷え」とは限りません

施術しているとよく経験することですが、患者さんの自覚に反して体が冷えているということがよくあります。逆に「足が冷えてたまらない」とおっしゃる方の足は、さほどでもない、ということも。

先日は、お腹がひどく冷えている患者さん、でも背中は暖かい。そこで背中にお灸をして温めると、何もしないお腹が暖かくなる、という施術をしました。
これは、背中があまりに冷えていて、それを温めるためにありったけの熱を背中に回してしまい、お腹を温める熱がなくなってしまった例です。背中を他動的に温めたので、もう熱を背中に回す必要がなくなり、お腹に回ってきて、お腹が暖かくなったというわけです。

この方の場合「温める熱源が不足気味」で「熱を動かす力は不足している可能性が高い」という二つの問題があるわけです。

思わぬものが、身体を冷やしています

ここにご説明した以外にも「ケガの対策が不完全」「長期にわたる薬物の接種」など、冷気に触れる以外に体を冷やす要因にはいろいろあります。このような方は、手術の切り痕の保守や、薬の見直しなど、身体を温める以外の要素の検討が必要です。

冷えにはタイプに応じた対策が必要です

「冷えるから厚着をする」といった生活上の工夫とも大切ですが、専門家にご相談されて、冷えの根本原因から改善されることが、辛さ解決の早道になるかもしれません。