僕たちは坂を上りきったのかな。
雲の上を歩いているみたいに、ふわふわしている。
そういえば、この季節の空気を、肺いっぱいに吸い込むのは、ずいぶんひさびさだ。
色んなものが坂道から転げ落ちないように、色んな人が踏ん張ったんだ。
僕たちはよく頑張ったなぁ。生き残ったこの世界は、思っていたよりもずっと元通りで、きちんと春も来たよ。
幾つかのものは、なくなってしまったけれど、それはまだ、妖精みたいに僕たちの周りをまわっている。
いつか誰かが、その微笑みを受け止めて、継承してくれると、僕は信じているよ。苦々しい過去も、そのときには味方になってくれるといいな。
これからも、色々なことがあるかもしれないけれど、今はまだ、もう少しだけ、この雲の上を歩いていたい。