アトピー性皮膚炎・花粉症・鼻炎・気管支喘息など、アレルギー性疾患は、どれもつらい病状と戦わなければなりません。
アレルギー疾患・代謝障害の施術方針
ここでは、アレルギー性皮膚炎を例に、鍼灸でどのようなことができるのかご説明します。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、Ⅰ型、Ⅳ型アレルギーが関与している反復性湿疹を主症状としますが、冷え・精神的なイライラ感・肩こり・不眠・便秘・全身の倦怠感など、多くの随伴症状にも悩まされます。
これらの自律神経の機能異常のコントロールも目的となります。
中医学的には以下のようにアプローチします。
アトピー性皮膚炎の患者さんは、体質の問題・精神的ストレス、過食や甘いもの、冷たい飲み物などの摂り過ぎで体が冷えて弱くなり、気血の巡りが悪くなっています。顔や頭部に熱が上がり、下半身は冷えて気血の巡りが悪くなっているのです。
まず、患者さんの症状から以下の4つの分類のどの体質に該当するかを決め、その体質に対応する対策(根治といいます)と、かゆみやその他の随伴症状・精神的ストレスに対する対策(これを表治といいます)を組み合わせて行います。
症状が強いときは、その症状を緩和するための対策(表治)を主に、症状が穏やかなときにはアレルギー体質を改善するための対策(根治)を行います。
風 熱 症状変化が激しい 乾燥、紅斑が強い
風 湿 ↑ 湿疹、滲出液が多い
風 寒 ↑ 寒冷刺激で悪化
気血両虚 ↑ 乾燥傾向
花粉症など、シーズンに入ってしまうと鼻水・くしゃみといった症状の緩和が対策のメインになり、アレルギーの体質改善ができなくなってしまいます。できることなら、症状が穏やかな時期に根治を行って、いやなシーズンに耐えられる体質に改善しておくことをお勧めします。
期間の目安と効果
アトピー性皮膚炎は対策の難しい病気ですが、根気よく施術を続けることで病状を穏やかにする可能性は低くはありません。明治鍼灸大学では、鍼灸によって9回目までに、初診時の掻痒感が10から5へと軽減した例を報告しています*。
また東京大学医学部付属病院アレルギー・リュウマチ内科の粕谷大智先生は、ステロイドと鍼灸について、以下のように記されています* (一部改変。文責:辻本)。
①アトピーや喘息は一生治らない病気で、一生ステロイドを使い続けなければならないという不安を持っている患者が多いが、正しくステロイド外用薬を使用していれば、アトピー性皮膚炎の病態である炎症をコントロールでき、いずれは寛解状態になりステロイドを使用する必要はなくなる
②ステロイドの強さを、鍼灸を行うことで弱いステロイドに移行していくように対策する
③炎症を惹起させる全身状態の管理に、鍼灸は有用性が高いと考える
* 『アレルギー性疾患に対する鍼灸治療』 江川、疾患別治療大百科シリーズ6 アレルギー疾患
耳鍼
当院では、症状に合わせて耳の施術点に鍼をうったり小さなシールを貼る、耳鍼も行っています。
シールは3mmほどの小さな鍼がついていて、耳のツボに貼って継続的な刺激を与える施術法です。アレルギーは気長な対策が必要になりますが、継続的な耳ツボ施術で、まったく症状が発症しなくなった患者さんもいらっしゃいます。(写真はシールではなく、鍼をうっています)