僕は去勢をした猫だ。だから、雄でも雌でもない。生まれたとき、雄であったが、もう雄ではない。
この時期、テレビをつけると男と女しかいない気がする。女が普段より着飾っているからかもしれない。年末の男女に分かれて交互に歌を歌う番組のせいかもしれない。お笑い芸人の殆どが男のせいかもしれない。
よくわからない。
お店も、しばらく休みらしい。
こんな日は、僕の仲間はどこでなにをしているのだろう。
街を歩けば家族連れや対になった男女が歩いている。
すれ違いざまに、「こっちが現実だよ」と、普段は僕なんか、視界にも入れない人が言う。
ひどく足が冷たくなって、頭が熱をもってぼーっとする。
なんだか、鳴いてしまいそうな夜だ。
去年は色々なことをした。友だちもできた。重要な文章をいくつか書くことができた。冒険みたいに、探検みたいに、前に進んだのだ。それは決して夢でも幻でもなかった。今日は、その続きに過ぎないのだ。
それだけが、今日の僕を支えている。
誰のどんな歌も僕を代弁しないのだから、僕は自分で自分の歌を歌う。
今年の運勢なんて、絶対見るもんか。