筋肉痛・打撲傷(だぼくしょう)
運動中ではなく、運動後に痛みが発生するものを「遅発性筋肉痛」といい、筋肉が収縮方向と逆に引き伸ばされるような運動でよく起こります。
発生や痛みのメカニズムなどはまだ定説がありませんが、伝染性疾患によって引き起こされる痛み以外は、鍼灸で痛みの軽減に役に立ちます。
また、筋・腱の断裂がない打撲傷は、鍼灸で患部の血流を旺盛にして回復の促進、疼痛の軽減が可能です。
捻挫(ねんざ)
関節部分に外力が加わり、生理的な可動域を越えて運動を強制されたときに生じる関節包・靭帯などの軽度の損傷をいいます。
関節包・靭帯などの関節支持組織の損傷はあるが、通常骨や軟骨などの損傷はなく、関節面の相互関係は正常に保たれています。
筋・腱の断裂がなく、骨折を起こしていない程度のものは、鍼灸により痛みを鎮静し、回復を早めることが可能です。
上腕骨外側上顆炎・内側上顆炎
上腕骨外側上顆炎は、テニスのトップスピン・バックストロークなどのラケット操作で発生することが多いのでテニス肘とも呼ばれます。
手関節を屈曲させたり、回内させると、肘関節の外側の骨の突起部 (上腕骨外側上顆)の周辺に痛みが発生します。
ゴルフ時に起こる肘関節内側の痛みはゴルフ肘と呼ばれますが、医学的には上腕骨内側上顆炎です。スイング中のダフリ、ボールを打った後のターフをとるダウンブロースイングなどによる衝撃が、利き腕側の肘関節内側に伝わり、回内屈筋群の筋・筋膜損傷を引き起こします。
いずれも整形外科的治療を要しない疼痛は、鍼灸によって鎮静することが可能です。
肉離れ(にくばなれ)・こむら返り
肉離れとは、急激に筋肉が収縮した結果、筋膜・筋線維が損傷することをいいます。完全に断裂する断裂、直接的な外力による打撲とは区別します。
肉離れは筋膜や筋線維の部分損傷で、定義は文献などにより異なりますが、スポーツ時に起こりやすく、筋肉が収縮しているとき強制的に引き延ばされることにより生じます。場所の大半は下肢(大腿四頭筋・ハムストリングス・腓腹筋に見られます。
発生要因として、筋肉の疲労、過去の損傷、ウォーミングアップの不足、急な気候の変化、体調不良、筋力のアンバランス、柔軟性の欠如などが考えられます。
こむら返りとは、ふくらはぎに起こる筋痙攣のことをいいます。「足が攣(つ)る」ともいい、特に腓腹筋に起こりやすく、他にも指・首・肩などもこの症状と類似した状態になる場合があります。
筋肉が無意識の持続的な強直性収縮(=攣縮)を起こしています。有痛性であり、激しい運動の後や、水泳後、睡眠中に見られることが多く、原因は筋肉固有の問題であるといわれますが、特定には至っていません。
肉離れやこむら返りは、東洋医学的には、筋肉に栄養がうまくいきわたっていない(精気が虚している)ために引き起こされていると考えます。局部に鍼や灸をすることで血行を改善し、痛みを軽減しつつ、全身対策を併用することで効果を図ります。
リハビリ
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などによる圧迫骨折では、つぶれてしまった椎体(背骨)の周りの神経が炎症を起こし、脊柱の棘側や椎間関節・起立筋部に強い圧痛が出るので、そのような部分に鍼刺激を加えることで、痛みを和らげる効果があります。
慢性期からではなく、急性期から積極的に鍼灸を行うことで、リハビリを早く始めることが可能になります*。
* 『東京大学医学部付属病院鍼灸治療室にお邪魔しました!』 医道の日本 2009年1月号