君はベランダで、曇り空を見ている。
空が泣かないから、君が代わりに憂いてる。
世界中の憂いを集めたような顔をしている。
君が黙っているなら、僕が代わりに泣こうと思う。
僕は鳴いてみる。君が振り向く。
ほら、曇り空なんか見ていないで、
一緒にこたつに入って鍋を囲もう。
僕は君を、暖かい部屋へ誘う。
僕ら昆虫じゃなくて、哺乳類なんだ。
寒くなっても、死ななくていいんだよ。
変態するんじゃなくて、成長する。
これまでの自分を殺さないといけないんじゃなくて、ぐんぐん伸びて、太く、丈夫になっていく。
罪も罰もきっと神様が与えてくれる。
だから、君はこれ以上、自分で自分をひっかかなくていい。
温かくて旨いものは、小さな太陽。
つまり、僕らにとっての正義ってこと。
痛い以外にも、色んな感覚があるんだ。
『温かくて気持ちがいい』も、『おいしい』も、その一つだ。
君はこれから、たくさん知っていくんだ。
裂いて出さなくても、色んな方法があるんだ。
温かくして、ぐにゃぐにゃにして、ぼよんって出したり、
おしっこと一緒に出しちゃったり。
もちろん、泣くのもいいよ(でもほどほどにすること)。
痛みとさよならは、いつも一緒じゃない。
悲しくて痛いさよならだけじゃなくて、
きっと、風に乗ってふわって消えていくさよならも、
光の中に溶けていくさよならもある筈なんだ。
とりあえず、それがわかるまではさ、まだ一緒にいようよ。
君が部屋に来てくれたら、嬉しい。


