ネコのメール箱、はじめます

僕は鍼灸院の猫である。なので、僕の家には、毎日のように患者さんが来る。

患者さんは、僕を見つけると、僕に話しかける。

患者さんは、色々なことを僕に話す。

声に出さないことも、心のなかで話してくれることもある。
それも、僕にはちゃんと伝わってる。

ずっと心につかえていたことや、心の奥に溜まっていたものを、僕だけに話してくれていることもある。
そういう話をするのは、とても勇気がいることだ。
それを話す相手に、僕を選んでくれたことを、僕はとても光栄に思う。
きちんとお話を聞きたいな、と思う。

だけれど、なかなか難しい。
次の患者さんが来たり、次の予定がある人もいて、時間が限られている。
もっと話したそうに帰っていく人、なにか言いかけてやめる人、心の中に閉まって帰っていく人、そんな人たちの後ろ姿がいつも気がかりだった。

その話をすることは、その人にとって、とても重要なことなのに。
もっとちゃんとお話が聞けたらいいのになぁ、と思う。

ツジモトに相談してみたら、『患者さんのお手紙を読んであげればいいんじゃないか』と言った。

それはいい考えだと思った。
手紙なら、どれだけ時間をかけて書いてもいいし、僕も時間をかけて読むことができる。

ツジモトが、僕が患者さんからの手紙を受け取れる、メール箱を作ってくれた。

このメール箱に送ってくれたものは、僕にしか届かない。
蓄積もしない。
そして、僕は君が何を話したか、多分すぐに忘れてしまう。

だから、君が治るのに邪魔になったもの、君の中の古くなったもの、君がもう持っていなくていいもの、そういうものでも、安心して置いていってほしい。

生き物は、生きている中で、古いものを外に出すことが、必要だ。
それは、古くなった血とか、体液とか、そういうものだけではなく、心の中も同じだと思う。

「話す」は「離す」である。
もう僕の一部ではなくなってしまうなら、僕だけのものでなくなってしまうなら、
手渡される先は、冷たい川とか、暗い土の中とか、ましてやSNSの中なんかではなく、
できれば温もりのある生き物がいい。

僕は一介の猫だから、君の心のなかで今まさに暴れているものを鎮めたり、癒やしたりすることは、たぶんうまくできないと思う。
返信すら、僕はできない。(猫だから、そのへんはあまり期待しないでほしい)

誰に何を話すかを決めるのは、その人自身だ。

受け取ることしかできない僕だけれど、君が少しだけ軽くなって、その分よく眠れたら、僕はうれしい。

 

ツジモト(鍼灸師・辻本)より

 というわけで、ネコのメール箱を始めます。

うちのこむぎに聞いてほしい話があれば、ここ mugi.cat.letter@gmail.com に送ってください。

うちに通ってくださっている患者さんも、そうでない方も、お会いしたことがある方も、そうではない方も、どなたでも、お送りください。
届いた手紙は、こむぎが読みます。(ネコなので少し時間はかかるかもしれませんが)
こむぎ以外は誰も、読みません。

蓄積はしない、と言っていますが、不思議なことです。
どうするのかを訊いてみると、空に上げて流れ星にしたり、川に流してふやかしたり、野原に放って虫に食べてもらったりするそうです。
ネコのやることなのでよくわかりません。冗談かもしれません。

またうちのネコが変なことを始めましたが、どうぞお気軽によろしくお付き合いください。

なお、ネコではなく人間と双方向的なお話をされたいようであれば、こちらのにしむら先生の方がお役に立てるかもしれません。
https://kanpo-kyoto.com/profile/

ツジモト(鍼灸師・辻本)による東洋医学身体相談はこちら
https://hajimeno.jp/top/consultation/