その日、暗くなってから降り出した雨は、ざらりとして、汚れを含んでいるかのように重たかった。
むかし、夢で教えてくれた高校生の太ももにぼたぼたと落ちた涙に似ていた。
家に帰った僕は入念に毛づくろいをする。
毛から皮膚に浸透する前に落とすのだ。
そうしなければ風邪をひく。
体中の雨粒を払い落として、ストーブの前でじっとしていた。
体が温かくなると、ぼーっとしてくる。
何かの不都合と凝縮された歪みがいっぱいになって、持ちきれず、落としてしまう。
それを雨や涙というのかもしれない。
涙はたえる必要がないと、僕らは雨が降るたび、学べばいいと思った。
夜半、目が覚めると、雨は止んでいた。