微かな秋の香りは、湿った風とともにやってきた。
この街の、風は強い。
それはずっと前からそうだ。
僕がこの街に来たときから。
その前は、わからない。
風の匂いをかぐ。
僕はもう「若者」ではない。でも年寄りでもない。
それはまるで、夏の終わりの始まり。
この季節には、やることがたくさんある気がする。
それは、自分より若い者を「恐れることなどなにもないだろ」と鼓舞し、自分よりも年寄りに、「ちっとはマトモな姿を見せてくれよ」と背中を叩くことのようなものだろうか。
猫は群れないけれど、ちゃんと社会はあるんだにゃー。
取り返しのつかないことなんて、何もないのだ。
だって、また来年、夏は来るのだから。