不安な気持ちが、強くなる

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50代の女性。2年前、癌の化学療法を受けたあと、鬱気味に。心療内科を受診し、現在は職場復帰されているのだけど、今でもときどき、胸騒ぎが始まり、いろいろと考えが巡り、またあの苦しい日々に戻るのか、という暗い気持ちから逃れられなくなる、とおっしゃる。

これは心療内科や、臨床心理士・公認心理師のお仕事だと思うのだけど、いろいろお話を伺う。

この方は、普段はとてもお元気で、フルタイムのお仕事をしながら、ご両親の介護、時間を見つけて趣味の園芸と、毎日忙しく過ごしていらっしゃる。それが唐突に、前記のような不安に襲われる。

お身体を触ってみると、頸部から頭部にかけて、硬結している。激しくこっている。そのお話をすると、お正月、お気に入りのスマホゲームをみつけ、長時間遊ばれたとのこと。スマホがどれだけ身体疲労を与えるかは、ケースバイケースであるけど、この患者さんの場合は、ご自身の意識以上に、身体が疲労しているようにみえる。たぶん、スマホゲームだけの理由ではないのだと思う。

鍼治療をお勧めする。これだけ筋肉や腱の柔軟性が失われていると、普通に起きて、普通に活動するだけでも、身体に強い負担がかかっている。疲れていらっしゃるのだ。彼女のような、身体がお元気な患者さんは、この点が厄介で、ご本人は、疲労の自覚がない。

山で、ベテランの登山家が遭難してしまう話を思う。
身体が健全のときに、誤った判断でルートを外れることはない。事故が起こるときは、身体が疲れているときなのだ。疲労しているときは、何かのささやかなきっかけで、心が不安で満たされてしまう。その結果、冷静さを欠いた判断をしてしまう。

「病は気から」とは、耳にタコができるほど聞いたことかもしれないが、自律神経に悪影響を与える「こり」を取るだけで、精神状態を含む身体状態は、大幅に改善する可能性が高いと考えている。