#57 ワクチンの影響について

nishi01

辻本先生に「ワクチンの影響」って話についてのリクエストを頂戴した。

ここ数年の「ワクチンの影響」って話題になっているのは、ひとつは「新型コロナウイルス」に対する「mRNAワクチン」と、そしてもうひとつは、数年前にマスコミが大きく報道して「ワクチン被害」という形で言い立てた「HPVワクチン(子宮頸癌の予防ワクチン)」と、の話が大きいのだろうと思う。

このコロナウイルスに向けたmRNAワクチンと、子宮頸癌予防のHPVワクチンとは、そもそも、ぜんぜん別のワクチンって話なのだけれど、なんだか、その辺が微妙に話題として似通っているというか、一緒くたにされている場合があったりするので、きっちり整理をして欲しいと思う。

コロナワクチンの話題の場合は、さらに、コロナワクチンの接種による影響と、コロナ感染のあとに出現した「後遺症」とが、何故か一緒くたにされていたりして、これもけっこうややこしいような話がある。よくよく聞いていると、それはあっちの話ね!みたいなこともあるのかもしれない。

そもそもワクチンってなんだい?なんて話は、そこまで複雑な話をしなくても良いのかもしれない。いや、厳密な話をはじめると、免疫の獲得とか、あるいは、ウイルスの排除の機構、なんて話をしはじめなければならない。これがけっこう、難しくて、わたしもふんわりしか理解していない。なにしろ、免疫学というのは、講義を聴いていたけれど、本当にとっても難しい話だった。

ワクチンの歴史的にはジェンナーが種痘をした、っていうのがその始まり、ってことになっていたはず。で、その後、パスツールが、微生物も滅菌して閉鎖したところには自然発生しない、っていうことを主張した(牛乳でパスチャライズ殺菌って処理をした、ってのがあるけれど、パスツール化した、っていうことで、パスツール名前が低温殺菌の方法に残っている)。こういう病原微生物との対処は、今でも(細菌性)食中毒予防の中で「菌をつけない」「菌を増やさない」「菌をやっつける」という三原則が言われている。https://www.gov-online.go.jp/featured/201106_02/ 

西洋…に限らず、医学の歴史の中で、感染症にどう対処していくか、っていうのは、けっこう大きな問題だったのだと思う。
日本でも江戸時代には麻疹が30年周期くらいで大流行して、「疱瘡は見目定め、麻疹は命定め」と言われていた。疱瘡は天然痘のことで、これは興味ある方はまた画像を探していただきたいけれど、やはり見ると「ギョッ」とするような皮膚の異常があったりする。

見た目で人を差別してはいけません、っていうのは、とっても大事な教えだけれど、皮膚の病変をみて一瞬ギョッとすることがある。それだけ、人類の歴史の中で、「皮膚病変を引き起こす感染症」が恐れられてきた、ということなのかもしれない、って思う。

そんな命定めだった麻疹は、予防接種がきっちりなされることによって、本当に激減した。
時々、麻疹発症者が一人発生するだけでニュースになる。これは、麻疹の感染力が極めて強いことがその理由だし、現在は日本国内での自然発症が皆無に近いので、どうしても海外からの持ち込み、ってことになると、飛行機のキャビン(閉鎖空間)での感染の蔓延、というのが懸念されることになる。

ワクチンっていうのは、だから、感染をさせない、あるいは感染症を軽度の症状で済ませることができる、という点では、とても重要な方法論であった、と言える。
そして、多くのワクチンは、定期接種として、公費での接種がされている。これは、ワクチンの接種が、それを受ける個人だけじゃなくて、公衆衛生的に、社会が得られる利益が大きい、という判断も含まれている。いわゆる集団免疫のことになる。ワクチンを接種できない人が少数いたとしても、周辺の皆がワクチンを接種して、野生のウイルスによる感染が発生しなければ、ワクチンをうっていない人も感染のリスクを低下させることができる、という考え方である。

まあそういう話で、一生懸命病気を防ぎましょう、っていうのがワクチンなのだけれど、ワクチンにも、まあいろいろある。麻疹と水痘(いずれも空気感染する)のMRワクチン。一時期はMMRワクチンっていって、さらにムンプス(おたふく風邪)のワクチンも混ざっていた。これは生ワクチンといって、弱毒化したウイルスそのものが入っているので、妊婦さんは接種できないとか、他のワクチンの接種と4週間あける、とかそういう用心が必要。接種は「皮下注射」になっている。

毎年、冬になると摂取するのは、インフルエンザワクチン。これもだいたい「皮下注射」ってことになっている。筋肉注射の方が良いのに、って話もあるらしいけれど。

そして、子宮頸癌の予防ワクチン。これはHPVワクチン。当初発売されたのが2価のワクチンで、その後4価、9価のワクチンが現在、採用されている。これは「筋肉注射」になる。
一時期、ワクチンの接種後に重篤な症状が出現する、という話になって、「積極的接種勧奨の取りやめ」という、微妙な取り扱いになっていたけれど、その後公費での接種を再開するようになった。

研究としては「名古屋スタディ」っていう形でワクチンの影響をあらわにしたい、って一生懸命調査したらしいけれど、接種した人と、接種していない人と、での症状の出現頻度が変わらない、ということもあり、ワクチンの影響ではなさそうだ、という結論になった。接種を取りやめ(?)していた世代にも公費で、追いかけ接種ができるようになった、ということで(公費で接種できるのは2025年の3月まで)駆け込みの需要が増えている?様子ではある。

最近、「接種するべきワクチン」というのの数が増えてきた、らしい。小児科では、生まれたあとから、定期接種のワクチンを、いつ、どのタイミングで接種するか、っていうスケジュールをびっちりと組む。これが途中で熱をだしたりすると、予定の接種が終わらない…とか、他のワクチンとの間隔を2週間ないし4週間あけなければならない…などの事情で、本当に厳しい日程調整が必要なものになっていたのだとか。

で。なんだかんだ、大変だから、ということだったのか、それだけじゃないのか、多くのワクチンが「同時接種を可能ということにする」って話になってきている。

同時接種、ってのは、つまり、同じ日に、ワクチンを接種しよう、って話になるのだけれど、じゃあ、針を刺すのは一回だけで済むのか?ってところが気になる。添付文書には「他のワクチンと混合しないでください」って書いてあるものもけっこうある(そりゃ、相手の成分と、勝手に反応したりすることが懸念されるので、薬の取り扱いとしては、しごく当然の要求ではある)ので、結局は「同じ日に、別々の場所に接種する」って話になってくる。なかなかワクチンの接種を受ける子どもたちも大変な時代になってきた。

で。
そんな時代に登場したのが、mRNAワクチンである、COVID-19の予防ワクチン。
これはたしか発案した研究者が早速ノーベル賞を受賞したはず。
一般的に、RNAというのは、分解されやすいので、投与したところで、働き始めるまでに分解される、というようなものであったのだけれど、そこを上手いこと、RNAとしては読めるけれど、なかなか分解されない、という構造に変更して、身体の中で抗原になり得るタンパク質を作らせる、というのがこのワクチンのコンセプトだった。
ちなみに、「筋肉注射」だったのだけれど、注入されたmRNAが入っていって、この異種タンパクを作る細胞は筋肉の細胞?なんだろうか?

なお、このときワクチンが狙い撃ちしたコロナウイルスの抗原に該当する部分は、その後のコロナウイルスの変異によって、もっとも大きく変化した場所、になったらしい。つまりそれだけ、ワクチンは有効だった、ということなのだろうけれど、ウイルスの変異は早い。変異して、獲得した抗体に反応しなくなったウイルスには、やっぱりワクチンとしてはあまり有効ではない、って話になってしまうのかもしれない。

とはいえ、この辺のウイルスの変異と、それに対する人間の対処、っていうのは、ウイルスの世代交代の速度がとても早いので、なかなか人類の研究が追いつかない、ということになりがち、らしい。

このmRNAワクチン、どういう理由かわからないけれど、やっぱり免疫の反応を強く引き起こすのだろう。熱がけっこう出た。その後、インフルエンザのワクチン接種などで「他のワクチンで体調不良が出たりしていませんか?」という問診項目に、「コロナワクチンで発熱」って書かれる方が激増した。やはりとっても大変だったのだろう、と思う。

そんなコロナの予防ワクチンだったのだけれど、いろいろと不調が出た、という話を耳にした。

ひとつは、野球選手が、ワクチン接種後に練習をしていて、心筋炎を起こして亡くなった、というニュースだった。これはちょっと、影響が大きかったように思う。

コロナのワクチンを接種したあとの不調で、熱が出る場所、とか、不調が出現する場所、というのを、それぞれ個別にお尋ねしていると、だいたいは「酷使していた場所」ないし、ワクチン接種後の時期までに酷使していた場所、ということになっているような、そんな気がする。

厳密に調査したわけでもないので、単なる印象から来る話ではあるのだけれど、たとえば、ワクチン接種後に目を酷使しておられた方は、その後、ピントが合いづらくなっただか、細かい字が見えづらくなった、だか、とおっしゃっていた。他にも、どこかに不調があった方は、その部分に熱と痛みが強く出た、というような話をちょくちょく耳にしたような記憶がある。
そういえば、インフルエンザなどでも、発熱の時に節々が痛むことがある。あれも発熱が理由、ということなのかもしれないけれど、酷使している場所で、特に熱や痛みが出るのではないだろうかと妄想している。

きつい風邪で、熱がしっかり出ると、熱が出たところの筋肉は、ずいぶんと柔らかくなる。昔肩こりが強かった人が、38度を超える発熱をしたことがあって、ご本人はヘトヘトになっておられたのだけれど、肩こりがずいぶんと軽くなっていたのを見たことがある。発熱から回復されて、肩の軽さを実感していただきながら「腰痛が残っているので、腰あたりにもう一度熱、出ないかなあ」なんて話をしていたのを覚えている。

酷使する筋肉に、どうしてそんなに熱が集まるのか、ということについては、よくわからないのだけれど、酷使している筋肉は、筋肉として微細な破壊と、その後に過剰な回復、というのを繰り返す。これがいわゆる筋肉がつく、というプロセスなのだけれど、ちょうどその筋肉の過剰な回復、というタイミングで、不良品のタンパク質(異物である抗原)を作れ、という情報(ワクチンによって持ち込まれたmRNA)を受け取ってしまった、と考えると、その部分で異物である主張をするわけだから、免疫反応が強く出る、ということもあっても不思議じゃないのかもしれない。

そして、筋肉が発熱を伴う痛みで動かせなくなったりする。
特に接種した肩の三角筋あたりは、局所で熱を出したりする。こうなると、五十肩のギリギリ一歩手前、なんかだった方は、三角筋の頑張りが得られなくなって、手を挙げる動作がやりづらくなったりする。これが「ワクチンのせいで手があがらなくなった」という訴えにつながったりしているのではないか、と思う。

針が入ること、薬液が入ることそれぞれが疼痛の引き金になるし、さらに、薬が中で反応して、熱を出したり、あるいは筋肉痛を引き起こしたりするわけだから、けっこう大変なことになっている。可能なかぎり、発熱しているときには無理せず安静に…と言いたいところだけれど、熱があっても仕事をしなきゃならない人も世の中にはいるわけで…なかなか大変なことだったと思う。

そういえば、HPVによる重篤な有害事象、とされた方々の公判が始まったのだ、という話をこれも伝え聞いた。ワクチン会社側からの反対尋問が、かなり精神をえぐるような話だった、ということを書いておられる方があった。わたしも真面目に追いかけているわけじゃないのだけれど、生育歴や社会的な、あるいは精神的なストレスがそもそも高い状態におられた、ということを示唆するような既往歴やエピソードを次々積み上げて行かれた、ということで、かなり過酷な生活歴があった、と考えられるらしい。こうした高ストレス状態を積み重ねたことが、重篤な身体症状の出現を引き起こしたのではないか、というのを、主張したい、ということのようである。

ワクチンというのは、集団免疫をつけるもの、でもあるから、ある程度接種者が増えることで、接種しない(あるいは接種できない)人もそれなりに感染のリスクが低下する、などの利益を得ることがある。まあこれも疾患とワクチンの関係によっても異なるのだろう、とは思うのだけれど。

公衆衛生は、一部の感染症について、その蔓延を予防するために、個人を隔離し、その人の移動の自由を一時的に剥脱することが許容されたりする。この辺の公衆衛生の使命と、個人の人権との天秤は、いつになっても、とても難しい話題ではある。

ワクチンの接種で、いろいろな病気が撲滅できる、と期待された。天然痘は種痘によって、ほぼ撲滅できた、ということなのだけれど、その一方で、インフルエンザなどは、毎年なぜか冬になると蔓延する。一体これはどういうわけなのだろうか?って考えていたら、どうやら、ロシアあたりにいる渡り鳥が、発症しないままインフルエンザウイルスのキャリアになっている、らしい。で、毎年、冬に日本まで飛来して、そこで、ヒトに感染を引き起こす、のだそうで。どうしてもインフルエンザを撲滅したければ、このロシアと日本を行き来する渡り鳥を全て駆除する、というような話になりかねない。

感染症のために頑張った、という話題で言えば、日本住血吸虫症、というのを駆逐するために、ミヤイリガイが生存する河川を改修して、これを撲滅したことがある。

ハエや蚊、あるいはネズミ、ゴキブリなど、衛生害虫を指定して、それらの数を減らそう、という活動もあったし、今でも少し残っている。生物の多様性を維持する、という生態学の話から考えると、ある種の生き物を撲滅する、というのは、なかなかに危険な話ではあるのかもしれないが、こうした、衛生環境の向上が、日本人の平均寿命を延ばすことになった、とも言えるわけで、やっぱり人間の生活環境を「きれいにしよう」という主張を、「いやいや、生物の多様性が…」っていうことだけで反論するのは、なかなか難しいのだけれど、そんなに人間がのさばっても良いものなのだろうか、なんてことをボンヤリ考えている。

人の身体の中に棲み着いて、どんどん増えて、その身体に悪さをする、そんな微生物のことをウイルス、と呼ぶのだけれど、地球さんからしてみたら、地球という「身体」の表面に棲み着いて、どんどん増えて、その表面の状態を大きく改変しては、環境を悪くしている、っていう、そんな「微」生物がいる、って話になっている、と言えるのかもしれない。
次は地球が作り出す「免疫」によって、その迷惑をかけまくっている「微」生物が排除されてしまうのだろうか。