#23 産後の話

nishi01

産後の話も、辻本先生からリクエストがあった。産後って、何の話をしようかしら。

お産の話はねえ。なかなか産婦人科医とか助産師じゃないと、関与できなかったりするから、ちょっと横に置いておきたい(とはいえ、鍼灸師さんがきっちり気の動きなんかで手伝ってくださるとお産が進むことはあるので、機会があればお手伝いをしていただきたいところ)。

妊娠中に大きく変わった身体が、子宮に関しては、「妊娠前の状態」に戻っていくし、授乳する、っていう面で言うなら、さらに乳房が張ってきて、哺乳類である!っていうスイッチが入ってくる。

赤ちゃんはわりと昼も夜も起きたり、寝たりするけれど、お母さんがそれに付き合わされるのでちょっと大変なのかもしれない。

赤ちゃんって、もう産まれて間もなくから、ちゃんと自分の意志があるのよ。で、ある程度それを伝えようとしているのよ。

わりとマイペースで、好きなときに寝て、好きなときに起きて、常に機嫌の良い子もいるし、ひたすらおっぱいが大好きで、「この子、前世はおっぱい大好きオッサンだったんじゃないの?」って言うくらい、授乳が終わってもおっぱい離さない、っていう子もいる。産まれてきてみたら、思ったより身体が動かない!とか、意志が伝わらない!とかって、癇癪を起こす子もいるみたい。

私がお産を教えてもらった開業医の先生は、「面会があると、その後、夜泣きぎゃんぎゃんしますねえ」っておっしゃってた。昼間の面会と、夜泣きを結びつけることのできる観察力がすごいよなあ…って思ったのだけれど、特に血縁者が覗き込むと、その時は我慢しているらしいんだけれど、夜になるとおっぱいがぶ飲みして、ぎゃんぎゃん泣くっていうことになるらしい。赤ちゃんは夜泣きするのが当たり前、とかって言うひとたちもいるけれど、実は、ちゃんと、赤ちゃんのあり方が尊重されていると、いちがいに夜泣きするものでもない、らしい。

お母さんはねえ。新米さんだし、本当に新しい生活に慣れていくのが大変よねえ。十代の後半から二十代の前半ごろって、ほら。夜遊びとかぜんぜん平気でやってるよねえ。徹夜とか。そういう体力がある時期って、つまり、ほんらいは妊娠出産して、育児やってるための体力なのよ。今どきは別のことに消費されてしまっているけれど。だから、年齢があがってからのお産は大変…だったりするんだけれど、ちゃんと夜泣きしない環境になっていたら、落ち着いた育児が始められることも、ある。

お産が大変だったりすると、産後の回復が大変だからねえ。まずはお産をスルッと済ませて、あとは育児、っていうのがきっちりできるようにしていきたいところだけれど。最近はお産がお互いにへたっぴになってきているから、そのあたりが心配。

本当は、妊娠中から、母性の本能的な部分を開発しておいて欲しいわけ。頭を緊張させて、理屈で考えて、っていうんじゃなくて。で、育児っていうのも、本能でやって欲しいわけ。本能で、赤ちゃんがかわいい、って思えるようなお産をして欲しいわけ。で、上手いこと最初のふたりの関係をつくっていってもらえば、どんどん良い方向に進んでいくでしょ。って思うのだけれど、お産が大変だから、その後が大変になることが多くて。それが悩ましい。

お産の時はねえ。ご自身のお母さんとの関係を見直す、良いタイミングでもあるんだけれど。そういう整理ができると、次のステップとして、自分自身が母親になっていけるんだろうと思うし、助産師っていうのは、お産の部分を含めて、こういう、「母になっていく」ことをサポートする仕事だと思うので、ぜひ、上手いこと助産師さんを頼りにしてほしい。

子宮はだいたい、1日目に臍の下、指1本分(一横指)くらいのところに触れるようになって、1日に指1本分(一横指)ずつ下がっていく。授乳すると、子宮の収縮が良くなるから、ちょっと強いと後陣痛って呼ばれるような痛みになることもあるけれど、大事な痛みだから頑張って欲しい。

授乳は、しっかり乳頭をくわえてもらう(ラッチング)のが大事で、そのために良い位置取りができるように工夫するわけなんだけれど、この辺も赤ちゃんと、お母さんとの相性があったりする。上手な子と、吸い付きやすい乳房と、上手なお母さんの組み合わせならハッピーなんだけれど、この辺がいろいろな組合せがある。どんな組合せでも、だいたいの子はお母さんが大好きなので、ぜひ上手いこと受け止めて欲しい。お産の時に母性のスイッチが入れば、結構頑張れるのだけれど、なかなかスイッチが入らないこともあって、その辺も今のお産のやり方に理由があるんじゃないか、って思うのだけれど、安全を優先すると、こうなってしまう、っていうことなのかもしれない。

だいたい4日から5日くらい、産後の入院をしたら、あとは退院して、おうちに帰ることになる。床上げ21日とかっていうから、産後3週間くらいは布団を引きっぱなし、で産婦さんはしっかり横になっておいてもらうのだけれど、まあ3週間でそのまますぐに起き上がるとそれも大変。もう少しゆっくりの予定にしてもらいたいところ。

野口整体では、産後に立ち上がるのを、「1時間ごとにはかった左右の体温が2回揃ったタイミング」とかって言うのだけれど(ちなみに、温度計は微妙に差があるから、きっちり差がゼロの温度計の組合せを見つけるところから始まるらしい。普通に2本買ってきてそれで終わり、ってわけじゃないから、本気でこれやるのは大変)、彼らの「立ち上がる」は、それまでには骨盤に体重をかけてはいけないので、お産した場所から、移動ができない。排便は差し込み便器みたいなのを使うことになるから、これはこれでお手伝いが大変。病院では理解してもらえないから、なかなか実現しないと思う。

産後も、骨盤ベルトとかサラシとか巻いている方が、起き上がるのは楽なんだけれど、つまりそれは、骨盤を支える筋力を外注している、っていうことになるので、あまり長期間支え続けると、自前の筋力が低下してしまう。なるべく安静にして、筋力の回復を待つのが肝心。

ざっと、産後の話を書いてみたんだけれど。

…思ってたんと違う、っていう方もあるかもしれない。そういう方はまた、聞きたいことを整理してお伝えしていただけたら。そのポイントに焦点を当ててお返事書いてみることにするので。