#08 月経と不正出血

nishi01

「今のこの出血が月経かどうかが知りたくて来たんです!これは月経で良いんですよねえ!?」

 

産婦人科で仕事しているとそういう話が時々あります。

 

じゃあ、月経かどうか、ってどうやって判定するの?って話になるわけなんですけど。ね?

 

月経の定義見てみましょうか。

 

月経:約1ヶ月の間隔で起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血

 

・約一ヶ月の間隔で起こり?

いや閉経したひとの出血って、一ヶ月の間隔で、なんてことないですぜ。1年くらい無かったところに急にでてきた出血だったりしますぜ。

・限られた日数で自然に止まる?

いや今その出血が、放置してても自然に止まるのかどうか、ってのが心配で来てるんですぜ。

止まらない!ってなってから「これは月経じゃなかった」って言うんですかねえ?

 

・周期的出血?

その周期が不安定になっているから心配なんでしょ!

 

今の、出血が、月経かどうか、って、これじゃ説明つかないでしょ。

なんなら「限られた日数」って書いてあるけど、過長月経ってのがあるひともいらっしゃってですねえ…的な面倒くさい話はとってもたくさん、ある。

 

なので、

私たちができることってのは、

「他の出血の原因はありませんか?」っていうことを探して、そういう明らかな出血の原因になっているものが無い、ってことを確認すること。なんです。

 

明らかな出血をする病態にはいろいろあります。

大変な病気から数え上げると「がん」ってのがやっぱりいちばんに来ます。

子宮頸癌とか、子宮体癌とか。

どっちも、不正出血があります。

 

私はほかの診療所で「月経不順だねえ…」っていうことでホルモン剤の治療を受けておられた方が、子宮癌検診を受けてなかったので…って検査をお薦めしたところで、大きな腫瘍ができていて、ということを経験したことがあります。

月経…かどうか、不安な出血がある、という場合には、いちどは癌の検査、うけておいて欲しいです。

 

他に出血する理由ってのも、いくつかあります。

 

機能性子宮出血っていうのが、ちょうど排卵期の時期に認められる場合があります。

これは通常の月経よりは少ない日数、少ない出血量で終わることがほとんどです。

これは…西洋医学ではまあとくに異常ないけれど、って言ってますねえ。

中医学的な言い方をすると、多少気虚が強くなってくると出やすくなると言われています。

子宮に血液を集める、ということと、排卵する、ということと、それぞれに気を用いると、

気が足りなくなって、子宮の血液をすこしこぼしてしまう、というイメージです。

帯脈のあたりを補ってもらうと、こういう不正出血は出にくくなるはずです。

 

閉経後の性器出血、といっていらっしゃる方の中に多いのは、

萎縮性腟炎という状態です。

粘液の分泌が減って、粘膜が薄くなってしまうと、こすれたときに出血しやすくなります。

なので、長時間歩いた後などに特に出血が認められる場合があります。

治療としては、腟粘膜に効くホルモン剤とか、漢方薬とかを使うことが多いです。

 

医者の仕事って、わりと地味なことが多いんですよねえ…。

快刀乱麻を断つように、これはこれ、あれはそれ、そっちはちがう、これは正しい!ってさっさと答えられたら、すっきりするのだろうとは思いますが、世の中そんなにすっきりしないことも多いわけで。