辻本先生が、前書きのところにリンクしてくださった、ある患者さんの月経にまつわる物語、を読んできたところ。ニーズが何かはわかっておいた方がよいもんねえ
月経が来る前に、ちゃんと教えてほしい、って気持ち、とってもよくわかる。
28日周期の月経だったら、まあ、それはカレンダーでも見てたら良いのかもしれないけれど、それでも微妙にずれたりするし。いつも気にしてなきゃならないとか、生理用品を準備しておかなきゃ、ってのは本当に面倒くさいから。旅行の予定だってあるし、仕事の都合もあるし。ねえ。
それでも、毎月の月経が、それなりに順調に来ているあいだは、まだ、そんなにややこしくない、って言っても良い?
更年期になるとさ。月経が不順になるひとがいるのよ。「月経が恒久的に来なくなるのが閉経」って話はちらっと前にもしたかもしれないんだけれど、じゃあ、そうなるまでの間、月経の周期は、っていうと…、ね。
「ひとそれぞれ」なんですよ。
あるひとは、毎月きっちり月経が来ていたまま、ふと、月経が来なくなって閉経。
あるひとは、なんだか、月経の来る間隔が延びてきて…って言っている間に、どんどん延びて、ついに「次の月経」が来なくなってから1年経ったので閉経。
また別のひとは、なぜか月経が頻繁に来るようになってきてから、しばらくして、突然、今度は月経が来ない。
定まった傾向があるだけでも良いのかもしれない、っていうくらいに、周期が延びたり、縮んだりしている人もあるし、その間に不正出血?みたいなのも混ざってくることもあるし。
本当に面倒くさい。
ねえ。月経の時に「あと何回」とか「次はいつごろ」とか、告知してくれ、ってんだ、っていらっしゃった方と、そんな軽口をたたいているんだけれど、なかなか、月経ってそういうものじゃない、のよねえ。
こんなの、昔からそうだったわけ?って思ったので、ちょっと調べてみたのだけれど。
どこをどう計算したらそうなるのか。
「現代人は、昔の女性に比べて10倍くらい月経を経験している」なんて話が出てきました。
https://www.meiji.co.jp/learned/femlink-lab/article/001/
えええ?10倍ってどういうこと?って思うのだけれど。
まずは、現代人の月経の回数を数えてみようか。
ざっくり、毎月1回、年12回。初経(はじめての月経が発来すること)がまあ、12歳くらいにしておきましょう。で。閉経が50歳くらい。ってことは、38年。
もちろん、妊娠出産があればその間(妊娠期間が9ヶ月くらい。産後に授乳していると、場合によっては月経が来ないこともあるのだけれど、体力がしっかりあるとか、ミルク哺乳も併用している、とかってことで、早い人だと1ヶ月くらいで月経が来る…もちろん、月経の前に排卵があるから、うっかりそこで妊娠してしまって、っていう人も時々いらっしゃる。)
38年のうち、子どもが二人とすると、ざっと2年分くらい引いて。
36かける12=432回。
「昔の女性が生涯で経験する月経の回数は約50回でしたが、現代女性はそれよりもはるかに多く、約450~500回と推測されています。」ってWebサイトには書いてあるから、まあ似たような計算したんだろうけれど…
昔の女性、っていつ頃のことやねん!ってツッコみたくなる。
ええと。野生の大型類人猿、ってのは、ゴリラ、チンパンジー、ボノボ、オランウータン、っているんだけれど、おおよそ、人間と同じくらいの大きさのこの霊長類は、だいたい2年に1回くらいお産をしている…みたい。
ヒトも、きっと野生の間は2年に1回くらいのお産をしていたんじゃないか、って想定なんだけれど。さ。
じゃあ、初経から数年経ったとして。16−17歳くらい?に最初の子どもを妊娠出産したとして。それまでに月経が(4−5年かける12回/年=48―60回)…あれ?50回超えたけど?もっと早くに妊娠して、ほぼ閉経まで、授乳して1年、妊娠で1年、くらいの計算で、ほぼ月経無しだったってこと?
一体何人お産するのよ…?2−3年に一人ってことで、40歳くらいまで?って計算すると、25年くらいあるのよ。10人じゃきかない数にならない?
流産・死産とか、新生児・乳児の死亡とかそういうのも多かっただろうから、単純に10人生まれたとしても、しっかり大人になったのは半分とか、もっと少ないとか、そういう話になるのかもしれない。
江戸時代の戸籍みたいなのが、お寺に残っている場合があるらしく、そういうのを見て数えた人の本を読んだ記憶があるのだけれど(江戸時代も、300年くらいあるわけで、その中でもいつ頃の話か、によってもだいぶ雰囲気がちがうらしい…)、「子どもはだいたい3人くらい」って書いてあるのを読んでびっくりした記憶がある。何の本だったか、もう思い出せないので、興味ある方は一生懸命さがしてほしい(わかったら教えてくださるとありがたい)。
これは、いわゆる流産・死産や新生児死亡みたいなのは数に入っていないから、ってことなんだけれど、それだけ子どもたちが亡くなることも多かったんだろうねえ…。
日本は、世界に誇る周産期死亡率の低さを保っています!って産婦人科の先生方や関連の団体ではそういうことを言っている。
これは、産婦人科の医療が進歩したとか、スタッフが頑張った、とかっていうのもあるんだけれど、それと同時に、公衆衛生が改善したことも大きい。
公衆衛生の話で言うなら、昔は衛生害虫駆除月間なんてのがあったんだぜ…って過去形で書こうと思ったら、今でも6月から7月はねずみ・衛生害虫駆除推進月間、らしい。
https://www.pestcontrol.or.jp/association/committee/tabid/112/Default.aspx
大規模河川工事をやって、ミヤイリガイを絶滅させたとか(日本住血吸虫症の予防のため)
あるいは、冬の自宅内の気温が下がりにくくなったとか、きれいな水が水道から出てきて飲めるようになったとか、そういう些細なようなことの積み重ねで、日本人の寿命も延びたし、新生児や乳児の死亡率も下がってきたんだと、私は思っている。
もちろん、公衆衛生に加えて、小児医療の充実ってことが大きな後押しになったことは言うまでもないんだけれど。
ただ、公衆衛生的に、感染症を駆除しましょう、とか食中毒を予防しましょう、っていうのはわかりやすいのだけれど、月経がしんどいのをなんとかしましょう、って話になると、これは公衆衛生…?ってなってくる。いやそんなことないぜ。公衆衛生もいっちょかみできるはずだぜ、とは思うのだけれど、まあ月経について、オープンに、真面目に語る、ってこともまだまだ難しいから、共通の課題にしてゆくまでの道のりはまだ遠いのかもしれない。
だって、月経って普通何日くらい続くか、とか、わかい男の子だと、知らないこともあるのよ。(恥ずかしながら、私もかつてそうだった…)
https://www.jaog.or.jp/qa/youth/qashishunki5/ 正常な月経の目安はこちら。
およそ、25日から38日周期で、変動は6日くらいまで。持続日数は3日から7日以内、ってことになってる。じゃあ、これをどのくらいはずれたら、相談しにいったら良いわけ?ってのもまた微妙な話で。相談にいったところで、「あー。うん。それはちょっと様子みましょうか…」って放置されることだって結構ある。もちろん、話の内容で、慎重に評価しなきゃならないかどうか、ってのを検討しているんだけれど。
あまり長期間無月経になってくると、今度は「本来なら分泌されているはずのエストロゲン」が出てきていない、みたいなことが起こっていたりして、若年なのに骨粗鬆症の心配しなきゃならなくなる、とか、あるいは不妊の心配しなきゃならなくなる…みたいなことがあるので、3ヶ月月経がこない、ってなったら相談してほしい。
特に運動やっている若い女性(アスリート)には、無月経が多いのだけれど、このアスリートの無月経は本当に後に影響が出てきやすいので、放置しないできっちり診てもらっておいてほしい。
まあ、そうやって相談する相手として産婦人科医を使ってほしいのだけれど、なかなか産婦人科医、っていうのもいろいろ居るらしく、生理痛の相談しにいったら「その程度で?」とか言われてなにも処方してもらえなかった、とか、っていうつらい話も時々聞くので、できたら、話のわかる、かかりつけの産婦人科医を持って、その人と相談してもらう、っていうのが良いんだけれど…。良い先生どこにいるのか、また知り合いのお仲間同士で情報交換しておいてくださいね。
このエッセーへの質問とお答え
初潮の時期と、それ以降の生理の安定性に、相関関係はありますか
性的関心の対象や強度は、生理の安定性に相関関係はありますか。例えば、性的関心が強い女性とそうでない女性、異性に対する興味を持てずむしろ嫌悪感をもつ女性といった、個人の指向性は、生理の安定性と相関関係はありますか
仕事が生きがいなので、生理がない人生を送りたい
生理時、食欲まかせに、ご飯を食べたほうがよいですか
月経困難症、月経前症候群、更年期障害と遺伝