3 ヒトの解剖生理学

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前節で、ヒトの器官系の大きな分類として、古典的な「植物機能」「動物機能」ってのがある、って話をした。

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000194939 (『カラー図解 はじめての生理学 上 動物機能編』)

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000194940 (『カラー図解 はじめての生理学 下 植物機能編』)

 

植物機能とは、個体の生命維持に必須である、食物の消化吸収や呼吸、老廃物の排泄などの「動植物に共通した働き」の部分ってことになる。ただし、こういう分類も極めて概念的なものであって、きっちり分類しきれない部分があったり、あるいは内容が重複していることもあったりする。生物ってそんなに理論だけで説明がつかないことがやっぱり多くある、ってことだよねえ。

動物機能ってのは、一般的に植物にはなくて動物には認められる働きの部分ってことになっていて、具体的には、移動や運動と知覚ってのがその中心で、加えてそれに関連するそれぞれの器官、ということになっている。

3-1 植物機能の器官系

呼吸器系:鼻、喉頭、気管、肺など

循環器系:心臓、動脈、静脈、リンパ管など

消化器系:口、食道、胃、十二指腸、膵臓、肝臓、胆嚢、小腸、大腸、肛門など

自律神経:交感神経、副交感神経

内分泌系:下垂体、甲状腺、副腎など

泌尿器系:腎臓、尿管、膀胱、尿道など

免疫系:胸腺、白血球、リンパ節、脾臓など

生殖器系:男性の精巣、精管など、女性の卵巣、卵管、子宮など

 

呼吸器系:

体に必要な酸素を、空気中から摂取して循環系へ取り込み、体内で産生された二酸化炭素を空気中に放出する器官である。

気道(上気道・下気道)と肺胞によって成立する。空気は鼻から咽頭、喉頭(上気道)で加湿され気管、気管支から更に分岐した細気管支(下気道)へと入っていく。最大23回の分岐で840万個ほどある、とされる肺胞とつながっている。肺胞上皮は薄く広がることでその裏にやってきている肺の毛細血管と肺胞内の空気との接触面積を大きくすることで酸素、二酸化炭素の移動効率を高めている。

肺そのものには自分で動くための構造はなく、(とは言っても気管支の部分なんかは平滑筋があって、収縮したりするのだけれど、まあ、大きい形では肺そのものは自分では動かない)肋骨などによって作られた胸郭と、その底部にドーム型に配置された横隔膜によって形成される胸腔が、横隔膜の収縮によって容積が拡張されることで、肺の中に空気が流入する(吸気)。横隔膜の弛緩と腹筋などによる腹圧で空気が流出する(呼気)。もちろん、横隔膜だけじゃなくて、肋骨を動かす呼吸補助筋も呼吸に関与しているのだけれど、やっぱり横隔膜の動きが一番大きい。横隔膜は呼吸器系の器官に分類されているのかどうか、っていうと、ちょっとよくわからないけれど、まあ呼吸器系で良いんだろうと思う。呼吸補助筋は、運動器系と共有していたりするから、単一の目的に使われているもの、とは言いづらいところがある。

呼吸器の疾患としては喘息っていうのがあるけれど、これは気管支の平滑筋が収縮することで、呼吸の出入りがしづらくなる病態。これに炎症がくわわって、炎症を起こした気管支はリモデリングっていうんだけれど、再構築していく。もともと肺って結構分化がすすんだ組織だから、再構築していけばいくほど、どんどん機能が低下してくる。なので、なるべく炎症を起こさない状態を維持していくのが喘息治療のキモになる。肺炎も、なかなか機能を回復するのは難しいから、一番はかからないこと、なんだけれど、まあそうも言ってられない。一応予備能はわりとあるから、極端な話をすると、肺が半分になっても多くの人は生存に影響はないのだけれど、肺の機能が肺炎などで落ちていると予備能も低下するから、注意が必要になったりする。

 

循環器系:

全身の血液およびリンパ液の分配と回収を行っている。心臓と血管(動脈、静脈)、リンパ管で構成されている。

肺で酸素を受け取った血液は、心臓の左心房に流入し、心臓の収縮によって左心室から大動脈へと駆出され(体循環)、全身の毛細血管にたどり着く。末梢の毛細血管で体組織に酸素やブドウ糖、タンパク質などを供給した血液は、二酸化炭素や老廃物を回収して静脈から大静脈、右心房に流入、右心室から肺動脈へと駆出され(肺循環)、肺で二酸化炭素を放出し、酸素を受け取るガス交換を行って肺静脈を通って左心房に戻ってくる。

心臓は本当に24時間、365日休まず働いていて、自分自身への血液の供給も自分でやっている。この心臓の周りにある冠動脈っていうのが、動脈硬化で細くなったり、あるいは閉塞したりするのを、それぞれ狭心症とか心筋梗塞と呼ぶ。結構胸痛が強くでることが多いのだけれど、糖尿病なんかがあると、神経が先に傷害されていたりして、痛みを感じないこともあったりするから、病態も一概には言い切れない。心電図で異常がでたりとか、あるいは採血で狭心症や心筋梗塞の発症を調べることもできたりはするので、急な症状が出たときには検査をしている。治療はカテーテルで細くなったり詰まったりした血管を通したり、あるいはCABGっていう、冠動脈バイパス術っていう手術をしたり、ってことになる。

毛細血管では、通常、血管からの浸出が吸収よりもわずかに多くなるバランスが作られているが、ここに浸出した余剰な体液はリンパ管が回収する。リンパ管は微細な管腔の網目状構造を形成しており、腸管で吸収された脂質なども運搬している。末梢のリンパ管は体幹部に近づくにつれ合流し、最終的には胸管という直径5mm程度の管腔を形成し、静脈に流入する。

リンパ管の疎通が悪くなると、だからむくみが強くでてくることになる。リンパ浮腫って呼ばれるけれど、癌の治療でリンパ節を切除したりするとでてきやすい。最近はリンパ浮腫についての予防や対処も充実してきているので、またそういうところを探してみて欲しい。

 

消化器系:

動物の生命維持に必要な栄養を消化吸収して、個体の構成要素にしてゆくはたらき(同化作用)の中心的な役割を果たす器官系で、もっとも異物と接することが多い場所であるとも言える。やっぱり消化器は生き物の基本的な構造になってくるんだと思う。

口腔には歯があり、咀嚼によって食物を粉砕すると同時に唾液を混ぜることで嚥下しやすい状態にする。唾液にはアミラーゼという糖質の分解酵素が含まれており、でんぷんを分解する。

嚥下(えんげ)は食物が喉頭を通過し、食道へと進むためになされる運動であり、舌や口蓋垂などの複合的な連携によって実現されている。結構芸術的な動き方をしていて、すごいなあとは思うのだけれど、設計上、上気道と消化器が交叉している、っていうのは、実はそもそも問題が多いのかもしれないって思うことがある。若いうち、この分離が上手くいっている間は良いのだけれど、年齢が上がってくるなどの変化で、喉頭蓋の閉鎖が上手くいかなくなってくると、水分や食物などの固形分が気道に侵入する(誤嚥)ことがでてくる。誤嚥すると、たいていの場合は、気道粘膜が反応して咳こむ(咳嗽反射)。この咳き込みによって異物の排出をする、っていう形で、この誤嚥に対処しているのだけれど、さらに高齢になってくるとこの「咳き込んで異物を除去する」っていう機能もまた低下してくる。誤嚥して、かつ咳き込むことがない、ってなると、異物が気管支にどんどん溜まってくるってことなんだけれど、これがいわゆる誤嚥性肺炎の原因になってくる。

まあ、肺に入ってしまうといろいろ大変なんだけれど、食物の正当な道筋に戻ってみよう。咽頭から食道に入った食べ物は、食道をだいたい十数秒で通過する。食道の先には胃がある。胃は食べた物を一定時間そこに貯留すると同時に、胃酸(成分は塩酸、pHは1-2程度である)を分泌することで、食物の変性消化を開始すると同時に、感染性微生物の殺菌をしているらしい。そんな危ない分泌物を分泌しつづけていて、胃自身は大丈夫なのか?って思うだろうか。通常は胃粘膜を形成しつづけることによって胃壁の自己消化は防がれているのだけれど、たとえばヘリコバクター・ピロリと呼ばれる細菌はこの強酸性の胃液の中で増殖してくる。そして、胃酸と胃粘膜の攻防のバランスを崩すことによって胃潰瘍を引き起こす原因になったり、その先で胃癌を引き起こしたりするってことが知られている。胃酸が食道の方にあふれ出てくれば逆流性食道炎ってことになる。

胃の幽門部を越えると食物は十二指腸と呼ばれる部位に進む。命名は、指12本分(指のおよその直径x12ってこと。間違っても指の長さではないのだけれど)の長さを持つ部分ってことに由来する。ここには膵管と胆管が合流した共通管が開口する部位があって(ファーター乳頭)、ここから膵液および胆汁が分泌される。膵液には糖質、脂質、タンパク質を分解する酵素が含まれていて、胆汁は胃酸によって変性された食物を中和しつつ脂肪を乳化することで、それぞれ消化吸収に大きく寄与している。

やっぱりここも消化液がいっぱい出てくるところだから、消化管上皮と消化液の攻防がなされている。消化管上皮が負けると、いわゆる十二指腸潰瘍ってのがでてきたりする。

膵臓は、膵液を分泌する外分泌臓器であると同時に、インスリンやグルカゴンと呼ばれる糖代謝ホルモンを血流に分泌することで血糖をコントロールする内分泌器官でもある。まあいずれも消化吸収に関連している働きではある。

胆汁は、胆嚢で作られる…わけじゃなくて、肝臓で作られたあとで、胆嚢に貯留され、ここで濃縮される。胆汁の成分は胆汁酸と胆汁色素(ビリルビン)がメインとなっているけれど、十二指腸に分泌された胆汁酸の多くはその後小腸で食品中の脂肪と一緒に吸収され、再度肝臓に戻ってくる(腸肝循環)。胆汁色素のビリルビンは分解された赤血球の色素(ヘモグロビン)の分解産物であり、黄色であるが、大便の色のもとになる。このビリルビンをうまいこと腸管に排出できなくなるといわゆる「黄疸」という病態を形成することになる。眼球結膜が黄色くなることで発見されることが多い。胆嚢にはなぜか、石が発生することがしばしばあって、これが胆管とか共通管に詰まると、とっても痛いし、消化液がつかえる形になるから大変だったりする。胆石が詰まって痛みがでてくると、胆嚢の摘出術をすることが多い。最近は腹腔鏡で胆嚢摘出をすること(ラパコレ、なんて呼ばれているけれど)がすごく増えたので、お腹の傷は小さくて済む。もちろん、石の場所によっては、十二指腸から内視鏡でなんとか、っていう方法をとったりもする。

食物は十二指腸で消化液(つまり膵液と胆汁)と混合された後、小腸(空腸・回腸)において、水分や栄養分を吸収され、回腸と盲腸の結合部である回盲部をとおって大腸へと送り出される。ちなみにいわゆる「もうちょう」っていうのは、この盲腸部についている細長い構造「虫垂」におこる炎症だったりする。虫垂は以前は痕跡臓器(かつては使用されていたが今はほとんど機能を発揮していない臓器)であると考えられていたが、現在は免疫や腸内細菌の調整に役立っているなど、必ずしも不要な臓器ではない、ということが少しずつわかってきている。

小腸はあまり、病気をしない、ってことになっている。いや病気があるのかもしれないけれど、なかなか内視鏡も届かないところだったりするので…。最近はカプセル内視鏡なんかが発明されて使われるようになってきたから、多少小腸の実態がわかるようになってきているんだろうと思うけれど。

大腸では水分の吸収がなされつつ、上行結腸、横行結腸、下行結腸を経由し、S状結腸をとおって直腸に貯留。食物残渣は大便として排出されるようになる。

大腸には腸内細菌が大量に存在し、これらがフローラ(細菌叢)を形成している。近年、この腸内細菌叢のあり方が肥満やアレルギー、果てはがんや乳幼児の夜泣きにまで関係がある、と報告がなされるようになってきており、今後の知見の積み重ねが待たれるところである。(デイビッド・モントゴメリー『土と内臓 (微生物がつくる世界)』築地書館、2016年https://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN978-4-8067-1524-5.html 、アランナ コリン『あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた』河出書房新社、 2016年https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309253527/

 

自律神経系

末梢神経のうち、植物機能を担当する神経系である。交感神経はおもに脊髄にある神経節を中心にして作用するが、副交感神経は迷走神経と呼ばれる脳神経が主なはたらきを担っている。

おもに血圧や心拍数、呼吸回数、体温や消化管の機能、発汗や排泄、あるいは性機能などにそれぞれ影響している

交感神経が「興奮、緊張」など激しい運動などに対応し、ストレスや「闘争・逃走反応」とか、を司っていて、副交感神経がその対照として「リラックス、鎮静」や身体の休息、回復に対応する働きを持っている。

自律神経系の概要 - 自律神経系の概要 - MSDマニュアル家庭版
自律神経系の概要 については、MSDマニュアル-家庭版から検索してください。

 

内分泌系

ホルモンと総称される伝達物質を分泌することによって体内の環境を整えるはたらきをしている。血糖値に関わるインスリンやアドレナリン、甲状腺ホルモンや性線ホルモンなど、そのはたらきは本当に多岐にわたる。

内分泌系の概要 - 内分泌系の概要 - MSDマニュアル プロフェッショナル版
内分泌系の概要および10. 内分泌疾患と代謝性疾患については、MSDマニュアル-プロフェッショナル版のこちらをご覧ください。

内分泌系も自律神経系もそれぞれ一冊ずつ本がかける、くらいの領域ではある。一番多い内分泌疾患は糖尿病とか、甲状腺機能異常なんだろうけれど、その他のマイナーな内分泌疾患もいろいろある。興味がある方はそれぞれ成書があるから、そういうものを読んでほしい。

 

泌尿器系

生命活動における代謝によって、いわゆる老廃物ができる。たとえば、タンパク質代謝によって生じる窒素化合物であるアンモニアや尿素など。また生体に摂取した過剰のナトリウムなどを体外に排出することで体液のバランスを保つはたらきをしている。

体循環で腎動脈から腎臓に流入する血液は糸球体と呼ばれる毛細血管構造を通過しながら、ボーマン嚢に、血中の水分を老廃物やミネラル、あるいはブドウ糖などとあわせて濾過流出させる(原尿)。原尿のほとんどは尿細管を通過する中で再吸収され、吸収されなかったものが尿となって腎盂に分泌される。これは尿管をとおって膀胱に貯留したのち、尿道をとおって体外に排出される。

ざっくり、体外に排出したい成分を尿に溶かした状態で排泄しようとすると、成人の場合、500mLくらいの尿が必要になってくるらしい。通常一日の尿量は成人で800-1500mLくらいと言われているけれど、これが2500mL以上だと「多尿」400mL以下で「乏尿(ぼうにょう)」100mL以下で「無尿」と呼ぶ。それぞれ事情があったりするけれど乏尿・無尿はその原因を調べて、なんらかの対処をした方が良い場合が多い。腎臓の機能が低下して、尿が排泄できなくなると、いわゆる尿毒症というのが進行してくる。人工透析を行えば、ひとまずこれは解決できるのだけれど、透析を行わないといのちに関わるようなことも多い。

泌尿器系で、死なない…けれど、とっても痛い、というのが尿管結石。これは、排出されるはずの成分が尿の中から析出して、尿管の中で結晶を形成することでできる。尿管には一部狭いところがあって、そういうところに引っかかると痛みが強くでるらしい。一度析出してももう一度尿に溶けるものと、溶けないものがあって、溶けない場合には、砕いたりして、尿管から出て行ってもらうのを待つことになる。砕くのは体外から衝撃波を与える、という治療があるのだけれど、結構大変。大変なんだけれど、尿管結石は死なない、っていう扱いになっているから、「痛風」なんかと一緒で、病院での扱いは微妙に軽い。この辺もなかなかつらい話ではある。

 

免疫系

体内に入ってくる異物、特に病原性微生物(細菌やウイルスなど)を排除するはたらきをしている。

主に白血球がその任にあたっており、白血球の中でも、貪食細胞、樹状細胞、リンパ球、形質細胞などがその働きを知られている。異物を貪食(貪食細胞)し、認識した異物を他の免疫細胞に提示(抗原提示…樹状細胞など)することで、この異物に対する抗体を産生(Bリンパ球)する。産出された抗体は異物(抗原)に付着することで周辺の免疫細胞や補体と呼ばれる分子などを活性化し、異物を除去するように作用する。

胸腺でのリンパ球分化によって自己と非自己(異物)の弁別をしているが、時折自分自身を異物と認識するような抗体(自己抗体)を形成することがあり、いわゆる自己免疫疾患と呼ばれるものを発症したりすることがある。

免疫ってのも、本当に難しい。自己と非自己の弁別もだけれど、ここで起こっている一連の物事っていうのもわかりづらかったりする。多田富雄氏https://www.shinchosha.co.jp/writer/2025/ がわりと一般向けにも書籍を書いておられるのだけれど…だいぶ情報が古くなってしまっているかもしれない。

癌についても免疫が働いている、っていうのがわりと最近のテーマにはなっていて、本庶先生がノーベル賞をもらったのもそういう、癌免疫の機構についての話だった。免疫や抗体産生っていうのは、分子生物学の中では、研究の道具としてもとても良く使われるようになっているし、最近の新しい薬で「〜マブ」とか「〜ミブ」なんていう高いネダンの分子標的薬は、だいたいは、こういう抗体を上手いことつくり続けるようにした細胞から得られたもの、だったりする。

免疫機能の異常があると、日和見感染っていうのが起こってきたりする。これは免疫抑制作用のある薬を使っていたり、あるいは白血球の数が減っている(抗癌剤治療とか、あるいは白血球が減少する病気だったりとか)と起こりやすい。

 

生殖器系

男性と女性で大きく形態や機能が異なる。

男性は、精巣での精子産生、精管での輸送と精子の成熟、前立腺での精液の分泌などがそのはたらきである。

女性は、卵巣での卵子の成熟と排卵、卵管での卵子の回収と輸送・受精、子宮への着床と妊娠のはたらきがある。妊娠にいたらない排卵はその後に月経をもたらすことになる。

解剖学的には泌尿器と共有する部分が多いので、まとめて泌尿生殖器系と呼ぶこともある。こちらもこれだけで専門書がいっぱいあるので、必要な方はそれぞれ探して欲しい。

 

3-2 動物機能の器官系

中枢神経系:脳、脊髄

末梢神経系:脳神経、脊髄神経

感覚器系:眼、耳、鼻、舌、皮膚など

筋・骨格系:全身の骨格筋、骨、軟骨、関節など。

 

神経系

神経系は大きく、末梢神経と中枢神経に分類されている。https://www.kango-roo.com/learning/2103/

中枢神経とは、脳と脊髄をまとめたものであり、末梢神経とは、その脊髄やあるいは脳から身体各部に放射される神経繊維によって構成されている。

中枢神経のうち、脳は、さらに大脳、小脳、間脳、脳幹、と分類され、間脳は視床および視床下部に、脳幹は中脳、橋および延髄に分類される。

大脳皮質には末梢神経から体性感覚を投射する部位があり、それらをペンフィールド(Wilder Graves Penfield,1891-1976)が記録しているのは有名である(ペンフィールドのホムンクルス)最近は微妙に更新されたものが報告されている様子ではあるhttps://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/column/medical/20230422.html

小脳は運動の制御に携わる領域であり、この部位に損傷があって機能が制限されると行為の最中にふらつきが出現する(小脳失調)。

間脳は自律神経の中枢、また内分泌の中枢として重要な役割を担っている。体温の中枢は視床下部にあるとされている。

脳幹は生命維持に必要な機能が集中しており、呼吸や循環、消化など植物機能の中心的な役割を担っている。

中枢神経もかなり分化が進んだ組織であり、出血や血栓による阻血などで組織が傷害されると、なかなか機能の回復は難しいとされている。ただし、ニューロンの接続はいくつになっても可塑性が残っているらしく、残存している脳機能がそのカバーをすることで、個体としての機能はある程度回復することがあるとされている。

末梢神経にはさまざまな種類の神経線維が含まれており、繊維の太さや、ミエリン鞘の有無によって、神経の伝達速度が異なるとされている。それらが組み合わさり末梢神経系を形成している。

このうち、脳から直接放射されている12対の神経を脳神経と呼び、https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E8%84%B3%E7%A5%9E%E7%B5%8C 脊髄から身体各部位に放射されているものを脊髄神経と呼ぶ。https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E8%84%8A%E9%AB%84%E7%A5%9E%E7%B5%8C それぞれ具体的な働きについては成書を参照されたい。

体性末梢神経の終末の多くはなんらかの感覚器あるいは運動器に接続しており、感覚器からの情報は感覚神経をとおって脊髄、そして大脳へと投射される。一部では、脊髄の水準で運動神経にシグナルを返すものが知られており(脊髄反射)、有名なものとしては、いわゆる膝蓋腱反射などがある。

運動神経は筋肉に接続しており、神経の刺激に応じて筋肉が収縮するようになっている。筋肉の出力よりは微細なコントロールの必要性によって神経の本数が決定されており、もっとも運動神経として神経線維の本数が多くなる、ってことは太くなるっていうことであるのだけれど、一番太い運動神経は外眼筋に投射している。

神経の変性疾患っていうのは結構な難病が多くて、ALSとかが有名ではあるのだけれど、神経が作用しなくなると、筋肉がどんどん萎縮していくことになる。これもいわゆる自己免疫が引き起こしているのかもしれないけれど、まだよくわかっていないことも多い一方で、少しずつ自己免疫的な部分を抑える治療法も出てきているらしい。

ここから、さらに感覚器系と運動器系とについての話を書かないと、解剖生理学の動物機能について、網羅したことにはならないのだけれど、どちらも結構な分量になってくる。というか、感覚器ひとつひとつが、それぞれで一冊ずつ本ができるような分量があるわけで、運動器は運動器でそれぞれ、関節ごとに専門書があったりする。私の理解している程度のことを書いたところであまり理解の助けになるような話が書けるとは思えないので、割愛することにする。