「今のこの出血が月経かどうかが知りたくて来たんです!これは月経で良いんですよねえ!?」
産婦人科で仕事しているとそういう話が時々あります。
じゃあ、月経かどうか、ってどうやって判定するの?って話になるわけなんですけど。ね?
月経の定義見てみましょうか。
月経:約1ヶ月の間隔で起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血
・約一ヶ月の間隔で起こり?
いや閉経したひとの出血って、一ヶ月の間隔で、なんてことないですぜ。1年くらい無かったところに急にでてきた出血だったりしますぜ。
・限られた日数で自然に止まる?
いや今その出血が、放置してても自然に止まるのかどうか、ってのが心配で来てるんですぜ。
止まらない!ってなってから「これは月経じゃなかった」って言うんですかねえ?
・周期的出血?
その周期が不安定になっているから心配なんでしょ!
今の、出血が、月経かどうか、って、これじゃ説明つかないでしょ。
なんなら「限られた日数」って書いてあるけど、過長月経ってのがあるひともいらっしゃってですねえ…的な面倒くさい話はとってもたくさん、ある。
なので、
私たちができることってのは、
「他の出血の原因はありませんか?」っていうことを探して、そういう明らかな出血の原因になっているものが無い、ってことを確認すること。なんです。
明らかな出血をする病態にはいろいろあります。
大変な病気から数え上げると「がん」ってのがやっぱりいちばんに来ます。
子宮頸癌とか、子宮体癌とか。
どっちも、不正出血があります。
私はほかの診療所で「月経不順だねえ…」っていうことでホルモン剤の治療を受けておられた方が、子宮癌検診を受けてなかったので…って検査をお薦めしたところで、大きな腫瘍ができていて、ということを経験したことがあります。
月経…かどうか、不安な出血がある、という場合には、いちどは癌の検査、うけておいて欲しいです。
他に出血する理由ってのも、いくつかあります。
機能性子宮出血っていうのが、ちょうど排卵期の時期に認められる場合があります。
これは通常の月経よりは少ない日数、少ない出血量で終わることがほとんどです。
これは…西洋医学ではまあとくに異常ないけれど、って言ってますねえ。
中医学的な言い方をすると、多少気虚が強くなってくると出やすくなると言われています。
子宮に血液を集める、ということと、排卵する、ということと、それぞれに気を用いると、
気が足りなくなって、子宮の血液をすこしこぼしてしまう、というイメージです。
帯脈のあたりを補ってもらうと、こういう不正出血は出にくくなるはずです。
閉経後の性器出血、といっていらっしゃる方の中に多いのは、
萎縮性腟炎という状態です。
粘液の分泌が減って、粘膜が薄くなってしまうと、こすれたときに出血しやすくなります。
なので、長時間歩いた後などに特に出血が認められる場合があります。
治療としては、腟粘膜に効くホルモン剤とか、漢方薬とかを使うことが多いです。
医者の仕事って、わりと地味なことが多いんですよねえ…。
快刀乱麻を断つように、これはこれ、あれはそれ、そっちはちがう、これは正しい!ってさっさと答えられたら、すっきりするのだろうとは思いますが、世の中そんなにすっきりしないことも多いわけで。